15場 ガールズトーク ページ19
「せんぱーい! 何でこっちにいるんですか?」
練習開始から一週間後。
どんよりとレッスンルームの隅っこで膝を抱えている影夜に、全く空気を読まない戌峰誠士郎が話しかけた。
「……ガールズトークの邪魔だってAに追い出された……」
戌峰以外の全員が一斉に(何だよそんな事かよ……)と思ったのは言うまでもない。
ただ一応影夜は年上なので、ちょっかいは出さない。
「……聞いてくれるか戌峰……」
「うん、聞くよ!」
「……お前は優しいなぁ……」
顔を上向けて戌峰を見上げ、影夜はしみじみと言った。
一方その頃。
「……で? 何でわざわざ兄さん追い出したの? いつもなら気にも留めないでしょ?」
Aが言うと、彼女に兄を追い出させた張本人である優芽はまだアンシエントの来ないレッスンルームで声を潜めた。
「だってあの人絶対騒ぐからさ……。波風立てたくないの」
「……何の?」
優芽は明るく活発でサバサバしている。基本的に女子受けが良く、度胸も据わっている。
故に三人の中では一番交遊関係が広く、色々な情報網を持っていた。
だが、このように真剣な表情で内緒話をするというのは初めてだった。
「多分二人は知ってるよね? 綾薙の卒業生が、暴力団の幹部だった話」
「……うん」「知ってるわ」
二人が頷くと、優芽は「じゃあ、その先は?」と不安そうに訊いた。
「消えた覚醒剤?」
鈴音が問う。彼女も知っているようだ。
「そう。実はね……」
再び不安そうに周りを見る優芽に、Aと鈴音は顔を見合わせた。
こんな表紙の優芽を、二人は初めて見たのだ。
「――その覚醒剤、此処に流れたんじゃないかって噂になってるの」
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作者名:月下 | 作成日時:2017年9月30日 23時