9場 性格 ページ13
「夢……」
揚羽が呟く。
「そう、夢。君にもあるだろう？」
「……うん。ゴメン」
「いいや、褒めて貰えて嬉しかったよ。Aはともかく、僕は歌が少し苦手でね……。こんな事もあろうかと練習しておいたんだけど、そう言って貰えてよかった。ありがとう」
影夜が微笑むと、揚羽も安心したように笑んだ。影夜の後ろでAも微笑んでいる。
「……一時はどうなる事かと思ったけれど。何とかなって良かったわ」
「全くだね〜。あの二人、何やらせてもほぼ完璧にこなしてくるから何処でも恨み買って来るよね〜」
鈴音と優芽が苦笑しつつ囁き合う。
「天は二物を与えないって言うけれど、あの二人は正に『天に二物を与えられた』存在だもの」
「あんたも言うね〜。ま、あたしも同感だけど。さてさて、今回はどうなる事やら……」
表情を微妙に不安そうなものへと変える二人に、卯川が話しかける。
「どういう事？」
「さっきの見たでしょう？ あの二人、練習すれば何でも出来るようになるのよ。ミュージカルや演劇に限らず、勉強やスポーツも、とにかく全部。加えてあの容姿なものだから……」
鈴音がそこまで言って躊躇するように口を閉ざすと、その続きを優芽が言った。
「平たく言えば、物凄く恨みや妬みを買い易いんだよね〜、あの二人。ついでに言うとああ見えて売られた喧嘩を買うのに理由は要らないってタイプだしさ。根はめっちゃ良い子達なんだけどね」
「……まあ、此方の配役が決まるまでも色々あったのよ。これはもう決定事項だから、これ以上何も起こらないとは思うけれど……」
その時の事を思い出したのか、二人は揃って溜め息を吐いた。
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作者名：月下 | 作成日時：2017年9月30日 23時
