【HQ】ヘーゼル色の光・3【夜久衛輔】 (ページ7)

今日:20 hit、昨日:68 hit、合計:15,466 hit

＊23-4. ページ7

・

「クソッ！！俺は直井コーチに連絡して救急車呼ぶ！」
「じゃあ俺は保健室に向かう！さっきまで生川の1年がいたばかりだからまだ涼しいはずだ！」
「夜久！Aを保健室まで頼めるか！」
「そのつもりだ！2人も頼むぞ！！」
「「ああ！」」

(俺がもっと止めていれば、声をかけていれば……！！！)

後悔しても、もう遅い。
目の前で意識を手放している彼女が無理をすることなんて、マネージャーになってくれてから分かっていたはずだ。

『───────怖いとか不安とかそういうの、全部ぶつけろ。』
『それら全部とっぱらって、俺ら"護りの音駒"が全国制覇するところ、傍で見届けてくれ。』
『どうしても皆に言えない、言いづらいとかあれば、そん時は俺だけで構わねぇ。凜をマネージャーに誘ったのは俺だし、それくらい当然の責務だ。仮に誘ってなかったとしても同じことを凜に言ってる。俺、受け止めるの得意なんだ。知ってるだろ？』

手を洗うために使う、ポケットに入れていたハンカチでAの鼻血を気持ち程度に押さえながら、抱えて移動させるために1度仰向けにさせる。熱を帯びてる膝の後ろに手を差し込んだ。

………なぁ、A。
俺があの日の喫茶店で、
Aにかけた言葉だけじゃ、頼りなかったか？

俺らだと、肩の力を抜くのには不十分なのか？

凜が俺達の支えになりたいと思って頑張ってくれてるのは、
俺ら皆知ってるんだ。皆感謝してんだ。

俺らじゃなくて俺だけでも、
全てを吐き出してはくれないのか？

俺はAにとって、
不安や恐怖を受け止める存在になりたいと思っているのに、

まだ、俺は、俺だけじゃ、頼りないか？

らしくもない不安がぐるぐると胸中を渦巻く。
だが、不安を抱えている暇なんて、

今はねぇんだ。

「───────目ェ覚ましたら、また無理しねぇよう念押ししてやっからな。あと腕掴んだことも謝っから。だから…………」

………どうか早く、目を覚ましてくれ。

バレエをしていたという身体は思ったより鍛えてきた筋肉がしっかりついているようで、想定していた重さよりずっと重く手にのしかかった。本当の体重よりもかなり軽く見られているのだろう。実際、俺もこうしてAを姫抱きにしなければ分からなかった。それでも俺にとってはまだまだ重くても構わない。軽いくれぇだ。

(……本当にAは…、知れば知るほど、放っておけないな、)

第3体育館から保健室までAを抱えて、全速力で暗い道のりを駆け抜けた。