【HQ】ヘーゼル色の光・3【夜久衛輔】 (ページ4)

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『ホントこまめに水分補給して身体も休めてね。私達マネージャー側もいつもより頻繁にドリンク作りやってるし、説明あったように休憩時間今日は多いからさ』

そう気遣って笑うAに、ほんの少しの違和感を覚えた。俺らのことを気遣って一声かけてくれるのはいつもの事だしその度に感謝している。しかし今日のそれは、どこか『事前に防衛している雰囲気』を何故か感じてしまったのだ。

『そろそろ練習試合始まるから全員ボトル頂戴！！』

その小さい身体からどうやってそんな大きな声を出しているのだろうか。元々かなり聞き取りやすい声質とボリュームだから、声を張るだけで大声を出すという動作はいとも容易く出来てしまうのだろうか。そうなると神は二物も三物もAに与えすぎてはいないだろうか。いや、特別に懇切丁寧に造られた存在がAなのだろうとまた思ってしまった。

今日はやけに血色の良い顔色をしているように感じていた。
暑いからだろうか？いや、この合宿中全て、今日ほどではないが暑かった。

バレエで代謝が始める前より段違いに良くなったと言っていた彼女は割と汗をかくタイプらしく、汗に濡れた黒髪がいつもと違う艶を放って、少し目のやり場に困るのはきっと俺だけじゃないはずだ。首筋に伝った汗をそのままに、真剣な表情で記録付けや備品の片付けなどに勤しむ姿を見て、山本が暑さでやられた赤い顔を更に赤くさせてうるさかったのは記憶に新しい。

今日は部活だけだから化粧してねぇはずなのに。
やけに頬と唇の血色の良さが気になって気になって仕方がなかった。

『──────なぁ黒尾。次のドリンク配り、俺らがやろう』
『了解、マネちゃんにばかり負担をかける訳にはいかないもんね。この暑さだと尚更』
『そうだな。少しでもAに休む機会を設けないと、心配になる』

練習試合の整列前に、黒尾の傍によって小さな声で今後の動きの約束を取りつける。ドリンク配りの前に、そのドリンクを作って後は配るだけの状態にしてくれているのはAであることに変わりはないのだけれど、ほんの少し良い、一瞬だけでもホッと一息ついてくれたら。
それは黒尾と海も同じだったようで、俺の提案に異を唱えることなく受け入れてくれた。

『───────大丈夫！？』

生川のベンチで、まだ入ったばかりだという1年生が暑さにやられてぐったりと項垂れていた。