*26-1. ページ15
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「───改めてもう一度、雪月の親御さんに連絡してくるから、お前は側にいてやってくれ」
「はい、」
同行した直井コーチにそう言われ、従うままにAが横たわっているベッドの傍にあった背もたれのない椅子に再度座り直す。救急搬送中に1度ほのさんにLINEを送ったが、直井コーチが現在の処置と今後の処遇をどうするか話すために離席し、今いる部屋にはAと俺だけになった。
「……………A……」
返事は、ない。
いつもは何か記録付けなどしていたとしても 衛輔、どうした? って言ってその大きな目で俺の目を見ながら返してくれるのに、黒い真珠のような瞳は瞼と睫毛に隠されたまま。
「…もっと早く、俺が止めていれば、気付いていれば……。ごめんな…。1人で、怖かっただろ……?」
清潔感が保たれている白の空間に、俺の声だけがシンと響く。点滴の雫が落ちる音は、静かだ。
「…A…A……」
返ってこないと分かっているのに、まるで縋るように名前を呼んでしまう。いつになったら目を覚ましてくれるのだろうか。この点滴の液体がAの体内に全て吸収されても、目を覚まさなかったら?指先が、手のひらが冷たくなっていく。カチ、カチ、と不安を助長させるかのように、時計の秒針が無慈悲に俺の鼓膜を刺激した。
「────────…………んぅ、………………」
「ッッ!!A!!!」
すると、鳥の羽のような睫毛がふるりと震えてから、宝石のように深い瞳がこちらの顔をぼんやりと捉えてくれた。驚きつつもAの名前を呼び、意識を確認する。高い熱のせいか、はらはらと留まることなく涙がキメ細かい肌の上を伝い始めた。
誰か呼ばなくては、そう思って立とうとした瞬間、聞きたくて仕方がなかった芯のある声が、弱々しくか細く震えた。
「あれ、……ゆめ、みてるのかな…、」
「ッ?凜??」
違う、夢じゃねぇ。
すかさずそう言おうとしたのに、何故かはくりと息を呑んだ。息を呑んだ後、直感で言ってはダメだと思った。そしてすぐにこう思う。
………このままであれば、Aの本音や弱音が聞けるのではないか?
「なんだろ……は、…ッふしぎ、なゆめ……でも、からだ、あ、つい、………」
熱は楓ちゃんが言っていたように、現在38.8度という恐ろしい数値を叩き出していた。熱を出したのなんてまだちっせぇガキの頃だったしこんなに高熱ではなかったと思うが、それでも苦しくてしんどくてたまらなかったのを覚えている。
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作者名:RiN | 作成日時:2024年3月18日 5時