【HQ】ヘーゼル色の光・2【夜久衛輔】 (ページ10)

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母親の教えは、私が自分以外の人に出来る数少ない気遣う行動に、大きく影響を与えている。

「ッ。」

衛輔の右手に、アルコールジェルを持っていない反対側の手で添えて、彼の手のひらに少しだけとろみのあるアルコールジェルを適量垂らした。

「…サンキューな。Aの育ちの良さを改めて知ったわ」
「いえいえ、育ちが良いというより、母親に叩き込まれた感じだよね。いつも誰かと来る時はやってるんでお気になさらず」
「っ。そうか、」
「？どうした？」
「っ、なんでもねぇ。それよりAの話を聞くためにここに来たんだ。ここまで来たからには話してもらうからな。隠し通そうなんて思うなよ」
「ッ…。」

忘れてた訳では無いけれど、本来の目的はそうだ。

「一応、ほのさんにはココに寄ってることを連絡してある。ゆっくりしてこいってよ」
「そう…ッ！？今なんて！？」
「期末テスト前にもAん家で勉強会した時、俺ら帰る前にほのさんに会っただろ？Aは今薬飲んでる身体だし、もしもの時を考えて交換してたんだ。黒尾と海も交換してっぞ」
「わぇ待って、2人もですか、え、いつの間に…、っ！もしかしてさっきの通知は…………」
「おう、ほのさんからだ」
「ヒェ…………」

……これ、聞いたことあるぞ。腐女子の友達が大騒ぎしてたやつだぞ。俗に言う(？)スパダリってやつではないのか。
そのスパダリムーブをかまされる対象が自分になるなんて、夢にも死んでも思わないじゃないか。
マジでマネージャーになってから少女漫画のような展開ばかりだなとどこか俯瞰して思っていたのに、今度はしれっと連携体制固めておいでになったとは……。
ワタシ、コレカラドウナッチャウノ〜！？
いや何言ってんだよはっ倒すぞ自分。そういうノリおよび情緒じゃないんですよ今は……！！！

「お待たせしました、水出しアイスコーヒーとカモミールブレンドです」

切り替えろ、そして今いる相手に全て白状しろと言わんばかりに、頼んでいた飲み物がテーブルの上に置かれる。
イケメンな店員さんが乗せるものがなくなったトレイのみ手にして立ち去ったのを合図に、何となくお疲れ様、とお互い言って、何となくグラスとティーカップをコツン、とつきあわせて乾杯した。
一口飲んで、温かくて柔らかいカモミールが喉をじんわり伝っていく。その感覚に身を委ねて、さっきの事を話す覚悟を固める。カモミールで温めたはずの喉の奥が、不安げにふるりと震えた。