【HQ】ヘーゼル色の光・2【夜久衛輔】 (ページ46)

今日:52 hit、昨日:26 hit、合計:22,443 hit

＊21-4. ページ46

・

「───────全体！10分休憩ーー！！！」

この日は今までで1番気温が高い。
熱中症を懸念したAが、監督やコーチ含む指導者側直々にに進言して休憩回数を多く設けた。

坂道ダッシュのペナルティも今日限定で中止し、体育館内フライング1周に切り替えられた。
アップの時間を4分の1に分割し、分割した時間が経過したら10分休憩。
練習試合時、5セットマッチの時に用いられるテクニカルタイムアウトを適用させ、身体を少しでも休ませる。練習試合後、すぐにペナルティに取り組まず5分休憩を挟む。試合に勝ったチームも平等に5分休憩を取る。

休む時間などない、練習時間を増やせと言われればそれまでだろうが、それ以前にその身体が崩れたら休むも何も出来ないのだ。
やりすぎは良くない。
オーバーワークのせいで激しい運動が出来ない身体であるAは、それを身に染みて分かっている。

その分マネージャー達はいつもより忙しなく動くことになってしまうことになるが、マネージャー同士やコーチ・監督らと連携して、各々が適宜休憩を取れるように計らった。これら全て、事前に準備するのが得意なAの提案である。

これだけ休憩時間を設ければ、仮に熱中症になったメンバーがいたとしてもさほど重症ではないだろう。Aはそう踏み込んでいた。

「───────大丈夫！？」

すぐ隣の生川ベンチから聞こえた悲痛な声。
まだ入ったばかりの1年生が少しぐったりとしゃがみこんでいて、マネージャーの英里が上げた声だった。

「直井コーチ、次の練習試合の記録付けお願いできますか」
「っおう、分かった」

Aは手にしていた記録用紙を直井に渡して、生川ベンチへ駆け寄った。

「英里！私も手伝う！」

1人で、ましてや滅多にないメンバーの体調不良と向き合うのは、きっと不安で堪らないだろうから。
自分がもし彼女の立場であれば、選手の一刻も早い回復に助力することもだが、真っ先に思い浮かぶのはやはり不安だ。『自分だけで大丈夫だろうか』という不安。
少しでも自分と同じ境遇の人がいるなら、今は合同合宿なのだからその気持ちを少しでもなくしてもいいのではないか。Aはそう思っての行動だった。

「Aちゃん……！助かる、ありがとう…！」
「とりあえず涼しい場所に移動させよう。私達でこの子を運ぶのはキツイな…、秋田コーチ、この子を運ぶの頼めますか！」
「分かった！」