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認めてしまったら、ダメな気がしていた。
その想いに名前をつけてしまったら、
苦しく切なくなってしまうことを知っていたから。
今までも、誰かを好きになったことはあった。
だが『付き合いたい』かと聞かれれば、
Aはそこまでの関係になりたい程でもなかった。
それを周囲の友達に打ち明けたら、
『信じられない!冷たい!』と一蹴されてしまった。
ただ、好きになった相手が、
相手自身が思う未来へ向かって頑張る姿を見守るだけで、Aは幸せだったから。
それを唯一分かってくれたのは水春だけだった。
しかし、
他の女子と仲良くしている姿を見てしまった時や、
自分以外の女子と付き合うかもしれないなんて噂が流れたら、
胸の奥が酷く酷く締め付けられた。
(……こんなの、ワガママすぎる)
その締め付けられる時の気持ちを、Aはワガママだと率直に思った。
だから、人を好きになることは辞めようと、
封印してしまおうと思った。
『全国制覇』という目標に向かって頑張っている彼にとって、少しでも助力できたら、支えになれたらと思っているのは変わらない。
ただ、このワガママな気持ちを向けている自分を、
認めたくなかったんだ。
「……でも、これだけは言わせて欲しい」
「っ、」
でも、それでも。
両頬に添えていた手を離して、3人の目をそれぞれ捉えた。その目は酷く切なげで苦しそうで、誰よりもはしゃいでいた水春は思わず息をのんだ。
「バレーの邪魔だけは、したくないの。ボールを繋いでチームに、勝利に、貢献して喜ぶ彼の邪魔だけは、何があってもしたくない。今後衛輔が歩む未来に、私の存在が邪魔で幸せになれないのなら、私は喜んでいなくなる。本当はそんなの苦しいし、叶うことならば衛輔とはずっと一緒にいたい。だけどそれが彼のためなら私は厭わない。」
「【彼がいる音駒というチーム】を好きなんじゃない。鉄君、信君、衛輔、ケンマ、トラ、フク、それ以外のベンチ入りできていないメンバーも皆…。【皆がいる音駒というチーム】が好きなんだ。皆の支えになりたい、皆の悲願を叶える助力をしたい。それが私に出来ることなら、マネージャーという仕事を通して皆の助力が叶うのなら、私は引退まで全てを差し出せる。だから────」
─────衛輔に抱いてしまっている、
この特別な想いは、想い続けるだけにする。
喫茶店で夜久に心情を吐露したあの日のように、
掠れて、声も震えて、
仕舞いには苦しげな涙が流れた。
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作者名:RiN | 作成日時:2024年3月14日 2時