【HQ】ヘーゼル色の光・2【夜久衛輔】 (ページ4)

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職員室にいらっしゃる直井コーチに記録用紙を届けて、すぐに体育館近くの女子更衣室に向かって制服に着替えて、体育館の鍵を閉めたばかりの衛輔と合流する。
待ったかどうか聞くと、全然待ってねぇから安心しろと衛輔は返してくれる。

そんな彼を見て、やはりさっきのあの瞳は私の変な思い込みだったのだと胸を撫で下ろした。
思うような結果を出せなかった大会明けや、これから部活を引っ張るのは私たちの学年になるのだと言われたことの2つが相まって、衛輔もどこかいつもと違う緊張感を持っていた中で、直井コーチからの伝言をただ伝えるためだけに、私に話しかけただけなのだと。それと先輩と話していた時に抱えてしまった変な疑問のせいなのだと。

(顔が整ってるから、少しでもいつもと違う表情してたら戸惑ってしまうもんね。『美人の真顔は怖い』または『イケメンの真顔は怖い』かな。)

なんて心の中でとぼけるかのように都合よく解釈していて、そこで遅れて気付く。

今体育館の入口にいるのは衛輔と自分だけで、

鉄君や信君、それ以外のメンバーが誰もいないということに。

「あれ、衛輔だけ？鉄君と信君、先帰っちゃった？」
「おう。Aが記録用紙を出しに職員室行った頃には、もう部室に着替えに行ってたぜ」
「マジか。じゃあ2人きり？」
「そうだな。てか、女子1人置いて先に帰るなんて危ねぇじゃん？1人で帰るより、誰か1人でもいた方がずっと安全だろ？」
「衛輔優しい、ありがとう。2人きりってことは…。あは、なんかデートみたい」
「ッ。ほら、さっさと帰るぞ」

思わず笑い声を零しながら、帰路につくための1歩を踏み出した。
ただ途中まで一緒に帰るだけなのに、デートなんて例え方してしまって、衛輔は嫌に思わなかったかな。でも何も言わなかったら、冗談だと分かってあしらってくれたのだろう。
冗談を混ぜてみたら、さっきのナーバスな冷たい気分が紛れたような気がして、それに縋り付くかのように無理やり安堵した。

昼間の容赦ない陽射しが残した熱が、
まるで空中でゆっくり停滞しているような暑さを帯びる夜の中、
2人は歩き出した。

外灯に照らされる夜道を歩きながら、今日あったことを振り返るように喋る。

授業でクラスメイトが出した訳の分からぬ珍回答、落ちた教科書を拾う時、先生のカツラが思いっきりズレ落ちたこと、いつも出される宿題に対するいつもの愚痴、そして部活での、先輩方の引退のこと。