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「十分くらい俺らは助かってるよ!自信持ってくれ!皆Aちゃんに感謝してんだよ」
「もうそんな、褒めても何も出ませんよ、」
分かってる。分かってるんだ。
先輩は完全なる善意と感謝で、私にこんな有難い言葉をかけてくれているのだと。声のトーンや表情、そして1つ年下の後輩に対する先輩としてのささやかな気遣いなのだろうと。分かってるんだ。
なのに1つ抱えてしまった疑問は、マイナスな気持ちへと変貌してしまったこの冷たい心地は、先輩からかけて下さる有難い言葉をも、素直に受け取らせてくれない。
「────────A」
「わ、衛輔お疲れ。どうしたの?」
「直井コーチがAのこと呼んでたぞ。すぐ職員室に行かなきゃならないから、今週分の記録を職員室に持ってきてくれって」
「ん、了解。ありがとう衛輔。ということなので先輩、私はここで失礼しますね。お疲れ様です」
「おう!お疲れ!」
一緒にまとめて下さった記録用紙を手にして、その場から立ち去ろうと出口へ向かう。
良かった。これ以上先輩と上手く取り繕って話せる自信がなかったから、やっと1人になれる。
「A」
「ん?、ッ……。」
すると先輩と二人になっていた衛輔が、ふと自分の名前を呼んだ。大きなツリ目気味の瞳を捉えれば、どうしてだか、どこかいつもと違う眼差しに見えた。人見知りとか人の目を見れないとか、衛輔はそういう性格ではないから、ただ彼は真っ直ぐ声をかけた自分を見てくれているだけかもしれない。
……それなのに。
衛輔の視線は、まるで獲物を逃がしてたまるかと言わんばかりの猫のようで。『目を逸らしたらいけない』なんていう訳の分からない直感が働いてしまった。
「外も暗ぇし、俺今日鍵当番だから途中まで一緒に帰ろう。戻ってくるまで俺待ってっから」
「っ。うん、ありがと、すぐ職員室行ってくるよ」
「おう」
(……気のせいだ、たまたまそう見えただけだ。)
今日の練習、試合明けということと今後のことを言われたことも相まって、いつもよりも真面目なトーンで衛輔は言ってくれただけだ。
それと、自分がさっき思ってしまった変な疑問のせいだ。
無理やり自分に言い聞かせながら、職員室へ歩く速度を速めて向かう。手にしている記録用紙に、つい力が入ってしまった。
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作者名:RiN | 作成日時:2024年3月14日 2時