【HQ】ヘーゼル色の光・2【夜久衛輔】 (ページ15)

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＊15-1. ページ15

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『高嶺の花』

『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』

………そんなに知ってる言葉は少ないが、その少ない言葉全てを現すかのような存在。
入学式で初めて顔を合わすクラスメイトの中で、一際違う雰囲気を纏って窓の外を眺めていた雪月Aの、俺が抱いた第一印象だ。
同じクラスの男子だけじゃなく女子も、他クラスの男女も、彼女の存在に目を引いていた。

ただ可愛いなとか美人だとかなら、ノリで話しかける男子や女子もいただろう。

均整の取れたハッキリめの顔立ち。
手入れが毛先まで行き届いてる、鎖骨くらいまで伸びた艶のある黒髪。射抜くような大きな瞳を持つ、少しだけ猫っぽいような印象的な目元。それを覆う鳥の羽のような上下ともに長い睫毛。毛流れが綺麗で自然に整ってる眉毛。鼻筋がしっかり通っていて、どこか存在を忘れそうになる鼻。人形や芸能人で見るような、骨がしっかり浮き出ている鋭利な角度の輪郭。尖った小さな顎。見るからに柔らかいであろう水を含ませた朱赤のような唇。
キメ細かくて日焼けを知らないような白い肌。制服の上からでも分かる、折れてしまいそうな程に細い腕。臓器が入っているのか分からなくなっちまいそうな薄い胴体。細いだけじゃなくどこか綺麗な筋肉がついているしなやかな脚。

……まとめると、整いすぎて怖い。

1つだけ、安心する要素があったのは身長くらいだ。俺よりもかなり小さい。整いすぎているせいで身長もそれなりにあるように見えた。
小さな身長なんて後から気付いて驚きながらも安心してしまう程に、雪月Aという整いすぎた容姿に、畏怖という感情すら抱いた。

寄せ付けないというか、寄り付いたらダメだろうなというか。そんな雰囲気を纏っていたからこそ、初めて見た時の印象は強く記憶に残っている。
事実そう思ったのは俺だけではなかったようで、『話しかけたいけど自分なんかじゃ無理だろうな』、『絶対相手にしてくれない』という旨の呟きを、彼女には聞こえないよう耳打ちしているクラスメイトや同級生をこれでもかというほどに見かけた。

長ったらしい式を終えた翌日の、ホームルームでお決まりの自己紹介。わざわざ教卓の前まで出て顔と名前、出身中学、それから何か自分を知ってもらうためのプラスアルファを言わなきゃならない。
大体そのプラスアルファは入る部活を言ってく奴らがおおかったから、それに倣ってバレーボール部に入部すると話してさっさと終わらせた。