#5 名前を教えてください(2) ページ5
「お昼いこ」
「……跡ついてるけど」
「え、どこ」
4時間目の時点で眠気に逆らえず、思い切り机に突っ伏し寝た時に頬に付いたであろう跡をグシグシと袖で擦り、食堂へ向かった。
・・・
食堂に着いた。
食券と交換した焼きサバ定食を片手に座れる場所を探すため食堂を見渡せば、奥の方の長机に荒北さんの姿を発見した。
「あ」
考えるよりも先に体が動く。
近くの手ごろな空いた机に定食のお盆を置き、荒北さんの元へ駆け寄る。
鈴木がゲ、という声を上げるのが聞こえた。
「荒北さん」
「ア?……ああ……」
フラれ……断られたにもかかわらず、話題一つ考えず話しかければああこの前の……というような返事をされる。
「荒北さん、名前を教えてください」
話しかけて、会話が終わってしまうのが嫌で、脳みそフル稼働で絞り出した質問を投げかける。
「ハ?なんでェ」
「名字は知ってるけど、名前は知らないな。と思いまして」
訝しげな顔をする荒北さんに焦って理由を後付ける。
もう少し納得のいく理由でも考えて後付けすればいいものを、私は思ったことそのままに伝えてしまった。
やべ。
さすがにやってしまったかと笑顔は凍り、冷や汗が背中を伝う。
「……やすともォ」
「!……か、漢字は?」
「立つに青で靖。友達の友」
「ありがとうございます!」
思わず俯きそうになった時、荒北さんのザリザリとした声が聞こえた。
……聞けば意外に教えてくれるもんだな。と心の中で思いながら、お礼を言って足早に鈴木の元へ戻る。
「もっとなんか考えてから行けば……?」
「変だった? 私なんか変だった?」
「超ぎこちなかったよ」
「ぐわ!」
鈴木は私がお盆を置いた席の隣に座ってコッチを見ていたようだった。
私は鈴木の冷めた目を風景に、すっかり冷めたサバ定食の味噌汁を涙ながらに啜った。
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しばた - 続きお願いします! (7月18日 16時) (レス) @page33 id: 1b4d124720 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - ひー&ラテさん» 何故かまた閲覧数が伸びてきているのでやれるだけやってみます……(. . `) (2021年8月12日 17時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
ひー&ラテ - 続きが凄く気になります! (2021年8月12日 8時) (レス) id: fe37a82818 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - 桜音姫さん» 楽しみにしてくださっていたのに大変申し訳ございません……(. . `) (2021年8月12日 4時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
桜音姫(プロフ) - もう少しで完結しそうなので完結までいってほしかったのですが残念です(^_^;) (2021年8月11日 19時) (レス) id: 3bb8706b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥居巫女 | 作成日時:2020年2月12日 2時