俺も犬飼ってるよ ページ26
放課後の廊下は人気が少ない。部活動のある奴らは皆部活に行くし、それ以外はとっとと家に帰るからだ。担任との進路相談で部活に遅れていた俺は、廊下から入る風の冷たさに嫌気がさしていた。に今外走ったらさみーんだろうな。
上の空で歩いていると前を歩いていた女子とぶつかる。お互いに前を見ていなかったんだろう。それにしても、普段から人に避けられがちな自分にぶつかってきた相手がいったいどんな奴なんだろうと下を見る。こっちを見上げようともせずに謝るだけ謝ってそそくさと逃げようとした相手は狙ってか狙わずか佐藤だった。
「Aチャン」
「うぉうわ荒北さん!」
相手が佐藤で何故かほっとしてしまった。ほんとに何故かは分からないが、心のどこかで安心感があった。佐藤は佐藤で素っ頓狂な声を上げて驚きに目を瞬かせていたが。
佐藤の奇行を軽くあしらって年齢の割に幼い言動を咎めると気になる一言が聞こえた。猫が起こしてくれてたんですよ。猫、と聞いて思わず聞き返す。
「猫ォ? 何お前猫飼ってんの?」
「あ、ハイ……実家では……?」
ペットを飼っているという佐藤との共通点が見つかり柄にもなく気分が上がる。
「俺も犬飼ってんだよネ」
「犬!」
「そ。見たい?」
「見ます!」
普段なら絶対に自分からは振らないであろう犬の話題。実家で飼っている秋田県のアキチャンだ。見たいか? と聞けば食い気味に見ます! と言ってきた佐藤があまりにもおかしくて、声を殺して笑う。
「”見たいです”じゃなくて見ますかヨ」
「……み、見たいです」
笑いながらそう言うと、佐藤は恥ずかしげに声を小さくしていた。
「かっわい……え? この子……」
「アキチャン」
「あ、あ、アキちゃん……!!? と荒北さんが一緒に居たんですね……」
「可愛いンだよ」
写真を見てデレデレとする佐藤は俺の言葉の端々に引っ掛かりを覚えているようだった。指摘するとめんどくさいから、とりあえず無視する。
「かかか、可愛い……???」
「お前ん家の猫チャンは?」
「猫ちゃん……家の猫写真嫌いで撮らせてくれないんです」
変な顔で俺の発言を反芻している佐藤は気にせず猫の写真を求める。すると、佐藤はグ、と一瞬言葉を詰まらせてから目を泳がせてそう言った。コイツ、まさか。
目を皿にして佐藤のスマホを見ると案の定ボイスメモアプリが起動されていた。オイ、コイツどうにかしてくれ。
ラッキーカラー
あずきいろ
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しばた - 続きお願いします! (7月18日 16時) (レス) @page33 id: 1b4d124720 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - ひー&ラテさん» 何故かまた閲覧数が伸びてきているのでやれるだけやってみます……(. . `) (2021年8月12日 17時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
ひー&ラテ - 続きが凄く気になります! (2021年8月12日 8時) (レス) id: fe37a82818 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - 桜音姫さん» 楽しみにしてくださっていたのに大変申し訳ございません……(. . `) (2021年8月12日 4時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
桜音姫(プロフ) - もう少しで完結しそうなので完結までいってほしかったのですが残念です(^_^;) (2021年8月11日 19時) (レス) id: 3bb8706b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥居巫女 | 作成日時:2020年2月12日 2時