……。 ページ23
今日は部活は休みだ。寮に帰っても特にやることも無いので校舎裏のベンチで暇を潰していた。ここは日当たりがいいのでたまに黒猫が日向ぼっこに来ることがある。……しかし、どうやら今日は気分じゃなかったらしい。黒猫は一向に姿を見せなかった。
……段々と日当たりの良さに眠気が出てきた。欠伸をして、じゃあそろそろ帰るか。などと思った瞬間だった。予想外の方向から声をかけられた。
「あの」
内心驚きつつも、なんともないように装って振り向く。そこにはやはりと言うかなんと言うか……佐藤が立っていた。
「ゲ、佐藤」
「ゲ……とは？」
「黙秘」
心底不思議である。というように首を傾げる佐藤。変なことを言って話が拗れると厄介なので黙秘権を行使する。佐藤も座るかと思い場所を開ければ、なんの遠慮もなくストンとそこに座り込んだ。
「荒北さん中学生のころ野球やってたって本当ですか？」
「……誰に聞いたのォ」
「え？ 新開さんに聞きました」
突拍子もない質問だった。誰からの情報かと聞けば新開から聞いたと言われ、俺は特段驚かなかった。まぁ、アイツなら話の流れで口を滑らせそうだな。と、そう思った。
「……アイツ」
「え、もしかして聞かない方がよかったですか……？」
「別にィ」
何故だろうか。もし他のやつに聞かれたのなら多少、いや。それなりに……いやいや。かなり？ 気分を害したかもしれないが、佐藤に聞かれる分には全くなんとも思わなかった。寧ろ、マズい事を言ったかと申し訳なさげに眉を下げた佐藤の顔を見て小さな笑いを噛み殺していた。なんて顔してるんだ。
「……やってたヨ」
「え」
「野球」
「あ、え、そうなんですね？」
「……ハ、なんだよ、お前から聞いてきたんだろ」
……なんと答えればいいか分からず普通にやっていたとだけ答えれば、佐藤は拍子抜けした返事を寄越した。自分から聞いてきたくせに何故か不思議そうな調子でいるから、肩の力が抜けた。今度は笑いを誤魔化せなかった。
「なァに俯いてんの？」
「や、だって……変な返事しちゃったんで……」
俯く佐藤の顔を覗き込む。変な返事？ 佐藤が変なのは元から……。と、ふと、そういえば名前を聞いたのに1度も呼んでいないことに気がついた。
ーーーーー
続きます
ラッキーカラー
あずきいろ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 88人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しばた - 続きお願いします！ (7月18日 16時) (
レス) @page33 id: 1b4d124720 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - ひー&ラテさん» 何故かまた閲覧数が伸びてきているのでやれるだけやってみます……(. . `) (2021年8月12日 17時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
ひー&ラテ - 続きが凄く気になります！ (2021年8月12日 8時) (レス) id: fe37a82818 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - 桜音姫さん» 楽しみにしてくださっていたのに大変申し訳ございません……(. . `) (2021年8月12日 4時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
桜音姫(プロフ) - もう少しで完結しそうなので完結までいってほしかったのですが残念です(^_^;) (2021年8月11日 19時) (レス) id: 3bb8706b83 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鳥居巫女 | 作成日時：2020年2月12日 2時
