#1 入学式 ページ1
ここは神奈川、箱根。
温泉で有名なこの土地の偉大なる名前を冠する箱根学園の入学式が今日行われていた。
……新しい環境に顔を強張らせる新入生や、初日だというのにスカートは短くメイクもばっちりで強気な新入生。
三者三様に並んでいる。
よく周りを観察していると、同じ中学の知り合いや事前にSNSなどで交流していたであろう数人のグループが既にできあがっていた。
私は、同じ中学に箱根学園を受験した同級生が一人も居らずボッチ進学と洒落込んだのだが、校内地図をくるくると回しながらトイレはどこかと首をかしげていた私に「トイレだったらコッチだよ」と案内してくれた猫目の女の子、鈴木と友達になることで本格的なボッチは避けることができた。
・・・
校長先生のありがたいお言葉を静聴し、まだ見ぬ長い高校生活に思いを馳せる。
部活、どこに入ろうかなぁ。
「どこ行くの」
「え」
「ソッチ、教室行く方じゃないんだけど」
「あ〜……ごめ、私方向音痴なんだよね」
「地図ぜんっぜん読めてなかったからわかる」
「あら」
入学式が終わってぼんやりしながら歩きだすとグイ、と腕が引かれた。
驚いて振り返ると信じられないという顔をした鈴木が私の腕を思い切り掴んでいる。
なんと持ち前の方向音痴さで進行方向とは違う方向に進んでいたらしい。
自分で自分自身が信じられなかった。
戻ろうか、と鈴木に言おうとすると待って。と制される。
鈴木の見る方に視線を向けると、廊下を横切る集団が見えた。
深い青が肩の辺りから袖まで太いラインを引いている、胸元の赤い細いラインが印象的な箱根学園自転車競技部、とデカデカと書かれたジャージを着た集団だった。
鈴木が、アレ自転車部だよ。と声を潜めてそう言った。
「自転車部って?」
「知らないの? ここ強いんだよ。優勝とかしてるし……」
「へぇ」
「へぇって、興味ないの? ア、ほら! 東堂さんに新開さんだ!」
器用にも声を潜めつつキャアキャアと華やいだ声を上げる鈴木。
だけど、私の目には東堂さん新開さんと言われた人達は映っておらず、ただ1人だけが鮮烈な光を伴って映っていた。
「ねぇあの人は」
「あの人? あ、荒北さん?」
「荒北さんって言うの?」
「そうだけど……、なに、なんで?」
「いや、好きになった。ちょっと告白してくる」
「……ハ?」
ラッキーカラー
あずきいろ
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しばた - 続きお願いします! (7月18日 16時) (レス) @page33 id: 1b4d124720 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - ひー&ラテさん» 何故かまた閲覧数が伸びてきているのでやれるだけやってみます……(. . `) (2021年8月12日 17時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
ひー&ラテ - 続きが凄く気になります! (2021年8月12日 8時) (レス) id: fe37a82818 (このIDを非表示/違反報告)
敏腕プロデューサー(プロフ) - 桜音姫さん» 楽しみにしてくださっていたのに大変申し訳ございません……(. . `) (2021年8月12日 4時) (レス) id: fcb79e9045 (このIDを非表示/違反報告)
桜音姫(プロフ) - もう少しで完結しそうなので完結までいってほしかったのですが残念です(^_^;) (2021年8月11日 19時) (レス) id: 3bb8706b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳥居巫女 | 作成日時:2020年2月12日 2時