脱獄非日常！ (ページ5)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,419 hit

リアム看守(短編もどき) ページ5

「おい、A。その書類はそこじゃないだろ。」
「えっ、ああ。ほんとだ。申し訳ありません。」
「……あぁ。」

最近仕事が多いせいか、はたまたそれ以外の理由か。眠れないことが多くなっていた。

ベットに入りいざ眠ろうと瞼を閉じた瞬間に、やらなければいけないことが頭に浮かんだり、その日にしてしまった失敗なんかが頭の中をよぎっていく。

そのせいで仕事に余計に身が入らなくなり、失敗するという、悪循環。今も教育指導をしてくださっているリアル看守の前で失敗してしまった。

目の前の彼は訝しそうに額に眉を寄せて此方をみているし……。
はぁ……という溜め息を押し殺して何でもないように笑い言葉を紡ぐ。

「新しく来た囚人のことが心配で、少し気が抜けていました。」

理由としては、これぐらいが妥当だろう。早く仕事を終わらせて休みたい。でも、今日も寝れないんだろうな。そんな思考がぐるぐると頭の中を回る。

「そうか。あまり気を抜くなよ。……不注意は事故や怪我を起こしかねんからな。」
「そうですね。以後、気を付けます。」

そう言ってファイルに報告書を挟んでいく。その時だった。ズキンｯと痛む頭。ぐらり、と世界が回る感覚。次第に狭まっていく視界。「あ……やばい」と思った頃には床とキスをしていまいそうな距離だった。覚悟を決めて、来るであろう痛みに備える。……が何時までたっても痛みは来なかった。瞑っていた目を開けると目の前にある、緑がかった黒色の瞳。視線が交わる。

「……えｯｯ……？」
「ｯはぁ……!!怪我は？」
「な、ないです。」