44話 激震 ページ48
高低差のある建物もなんのその、音を立てずにピョンピョンと城下町の奥へと進む。兵士を魔科学の銃で眠らせる作戦が立てられた城壁に飛び移り、覗ける範囲で半壊した城内の様子を見た。
「…キチ、そろそろ休んだらどうだ」
「いいえ王、俺はまだ休めません」
羽根ペンを走らせ、書類に顔を向けながらキチはそれが当たり前かのように呟く。大きい机の上には大量の書類が積み重ねられていて、それを見ただけではどれが何の資料なのか皆目見当が付かない。
指にも包帯が巻かれていて少々赤黒くなっている。キチの手は限界に近いだろう。
「まだ…まだ収入が不安定な者、住む家の無い者、家族の居ない者がいるんです。その為にも俺は…………俺は手を休めてはいけないんです…………」
「…………そうか」
王は窓から外を見て、風を感じた後に振り向いた。
「この騒動も収縮が始まっている。民は手を取り合い、国を頼らずとも自らの力でもとに戻ろうとしているのだ」
「王…?」
「キチ………お前はもうこの国には要らない存在だ」
ペンを走らせていた手はピタリと止まった。
状況が理解できない。全く以て意味がわからない。
「そ、それは一体どういう事なのですか」
王は感情一つ顔に出さず、手をドアに向けて伸ばすと黄金色の光が飛び、ドアが開いた。すると数人の着慣れていない服を着たように見える一般市民がぞろぞろと入ってきた。キチは退かされ黙々と作業を始める。
「【クビ】だ、キチ」
「………へ?」
「お前は目的を達成するまで【国外追放】とする。早急に荷物をまとめて去るがいい」
あまりにも突発的な行動に出た王にキチは思考が一切追いつかないまま、召使にされるがままに城門まで追いやられた。
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作者名:ミミック | 作者ホームページ:https://twitter.com/neidangel
作成日時:2016年8月16日 20時