41話 王への恩 ページ44
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キチはかつて日の出の国と言われていたとは思えない程半壊した土地を疾走し、同じく半壊した城内へと駆けていく。
目的はただ一つ、王を助ける為に。
兵隊と異形種の死体や障害だらけの廊下を走り抜け、遂に王の間に辿り着くのだった。
最上階にあるこの場所は下より大きく揺れ、あたかも全く知らない場所のようであったが、自分が当たり前のように生活していた分気味が悪い。
「国王!」
必死の形相で扉を開け、闇の中に横たわっている王を介抱する。
「キチ…………………キチなのか……?」
意識は朦朧としていて、掠れた声の王は彼の顔を茫然と見上げる。
「ここは危険です!!直ちに逃げ出しましょう!!」
「しかし…………私は……………闇に………飲まれて…………………………………………………無意識とはいえ……国民を………この国を…………これは私の『責任』なんだ」
神の前に懺悔するように若き王は拳を握り締め目に涙を浮かべながら喋る。
キチは、王自身が【望んだ結果ではなかった】のならそれで良かった。
「貴方は悪くない!!!だって………だって貴方は……父が戦死し、不治の病に掛かった俺の母の療養を工面しながら……俺を…こんな大層な役職に置いて働かせてくれて……………」
キチは王の両肩を掴み、光の宿らない王の目を見やってこう言った。
「そんな優しい貴方が悪いわけがないじゃないか!!!ここで何もかも諦めたらこの国はそれこそお終いなんだ!!!だったら……だったら『責任』を取ってこの国を再建してください!!!」
「キチ………!」
王は周りに漂う闇の瘴気をマントで払い、立ち上がる。
「貴方の為に、戦っている少年少女がいるんです」
「…………私達の国の為に…か」
天変地異の如き爆音が扉の前に響き、天井に大きな穴が空く。
「!!……ミクオ…?」
水色の髪の毛をたなびかせ、蒼い宝石の如き目を鋭く光らせながらボロボロの少女と墜ちていく青年。
その手には大きな鎌を握っていて、装飾のシャンデリアの羅列は外れ、ダイヤモンドは天使を祝福するかのように宝石は瞬き解けていった。
「青…………?」
王は朧げに呟く。
「あいつ…勝ったんだ…!」
キチがガッツポーズをしていると王は口を開けながら呆然としている。
「……………青の髪に青の目…」
「…王?」
「………………………【星死ニ神ノ子】」
「…!!!」
煙が立ち込める大穴を見降ろすキチは、膝から崩れ落ちた。
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作者名:ミミック | 作者ホームページ:https://twitter.com/neidangel
作成日時:2016年8月16日 20時