20話 糸溜まり ページ22
あの背丈と濃い海のような目の色は神の子であるアイツしかいないのだ。青系統の色の髪の毛を持つ者はミクオやジェラのいた世界では神々の血を受け継いでいる証拠だからである。
「(とにかくアイツが女装とは驚い…)」
「それは褒め言葉ですか？ありがとう！同い年なら敬語使わなくても良いんじゃない…かな？」
彼女？彼？その隣にはこの国の王国書記が立っていた。
仲良く喋っている。
「…」
複雑な気持ちが喉元を通るかのように嗚咽が始まる。
「(なんだ……この…嫌悪とは違う……)」
心の蔵が揺れると共に汗が出てきた。
「(ここは……退散…)」
壁に這いつくばりながらジェラは城を後にした。
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「お疲れ様です」
レイはバーのママに頼んだミルクココアを裏口から持ってきてミクオに手渡した。
ミクオは髪の毛を手でわしわしと崩した後に首にブローチ型で掛かっている呪仮面のアバダンを触り魔法で作ったドレスを解いていつもの服装に戻った。
「つくづく便利な魔法ですね…もっと他の事に役立てたらいいのに」
ミクオは神の子で生まれつき魔力がとても高いのだが、普段は身体能力飛躍や回復能力に使われている。本人曰くすぐに腹が減るらしいので魔法を直接戦闘に役立てる事は中々無いのだ。
「潜入って大変だね」
顔をいつも以上にしかめて言った。
「まぁ…まさか彼が未成年だったとは誰も予想してませんでしたから…」
レイもコップに薄く浮かぶ朧月を見ながら首を落とした。
「…あの緑のヒゲ、悪い奴じゃなかった」
「…！」
レイがミクオを見ると、ミクオはあぐらをかき下を向いてミルクココアのコップを腹部に抱えていた。中身はまだ残っている。
「あの国にも…あの国の中枢にも良心がある…って事ですか？」
「うん。あいつ寂しそうだった。大事な何かを前になくしたみたいな」
ミルクココアを飲み干し、マントを羽織る。
『あー、あー。ﾏｲｸﾃｽﾏｲｸﾃｽ…皆、聞こえる？』
アクアからの無線。作戦決行の時間が近づいている。
「うん」
「えぇ」
レイはバーのママにコップ２つと代金を払う。
「わざわざ裏口に居座ってしまいすいません」
「はいはい毎度あり、さっき聞かせてもらったこの国を救う話は本当だといいんだけどねぇ」
「えぇ、明日には必ず革命の日が昇ると思います。」
「まだ子供なのに命は惜しくないのかい？」
レイとミクオはフードを被り、ニカッと笑った。
「無頓着な子供だからこそ出来る事だってあるんですよ」
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作者名：ミミック | 作者ホームページ：https://twitter.com/neidangel
作成日時：2016年8月16日 20時
