鬼神と人喰い鬼と鬼殺隊

◇(４) ページ9

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根拠を示す。

それに同意した産屋敷は"藤の間"を提案した。






「四方八方を藤の花に囲まれた小さな屋敷でね。
此方の鬼は日光と藤の花を酷く嫌悪しているから、
その屋敷で朝を待ち、日のある内にこの屋敷に戻る。
戻って来れたら、それを根拠としようか」

「 成程、ではそうしよう 」






私が頷くと、男は奥の襖に声をかける。

子供が二人ひょこりと顔を出す。
右の子をひなき、左の子をにちかと紹介された。






「この方を藤の間に案内してあげなさい」


「はい」

「分かりました」





右の子が私の右手を、左の子が私の左手を握る。






「 おや、これは一体？ 」

「すみません、癖でつい」

「御気分悪くしてしまい、申し訳ありません」





左の子が私を見上げて言えば、右の子が続いて謝る。
そうして離された手は行き場の無いまま。

何処か寂しさが残った。





「 手を握るのは幼かった頃の息子だけだったんだ。
だからあまり慣れていなくて、此方こそすまない 」





双方に笑いかけて手を差し出せば、
その子達は少し嬉しそうに再度手を握る。

父親に似て、優しい人間の子供だ。






「A」

「 何だい？産屋敷殿 」

「体裁として根拠が必要なだけなんだ。
私は貴女を信じていないわけじゃない」





呼び止めて何を言うかと思えば。






「 ははっ。君は面白い人間だね。
分かっているよ。他の者に伝えるには根拠が必要だと 」

「それは良かった」

「 君よりずっと長く生きているんだ。
それくらい分かっているさ。案ずるな 」

「それはそうだね」






あぁ、今度の笑みは真の笑みだ。






「 おやすみ、可愛い人間の坊や 」


「おやすみ、A」







今日、この夜だけはどうか幸せな刻であるように。









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