◇(３) ページ16
･
目の前にいる子供は確かに鬼で、しかし人だった。
「禰豆子、この人がAさんだ」
「 初めまして、禰豆子。
私はAと言う。君と同じ鬼だが地獄から来た 」
「ふんふんっ」
幼女の見た目をしたこの可愛らしい子が、
竈門炭治郎の妹で、人を喰わない鬼。
聞いていた年齢よりも幼いが鬼の反動だろうか。
「あ、それはこの箱に入る為です」
日の出る時間にも一緒にいられるように
少年の師匠が作ったという木箱。
禰豆子は箱に入っている大半の時間を寝ているらしいが。
_____随分窮屈そうな
いくら小さくなったとはいえ。
少年が背負えるだけの大きさだ。中は狭い。
しかしそうしなければ外に出る事は出来ない。
不憫だと思った。
人として幸せに生きる筈だっただろうに。
「 私は鬼として長い時を生きてきた。
君達の想像を遥かに超えた長い長い時だ。
その私でも理解出来ない事がある 」
「理解出来ない事、ですか」
竈門炭治郎が首を傾げる。
「 人という生き物だよ 」
禰豆子の頬に手を当て、兄に目を向ければ
彼は少しばかり困惑した顔をしていた。
「 人間という生き物は流れる時代によって
その考えや行動を変化させてきた。
少し前までは外国を受け入れず、鎖国していたが
今はそこかしこに外国の文化が色付いているのがその一端だ 」
黄泉の国から此処へ来るまでの少しの時間だが、
人が暮らすこの現世を見る事が出来た。
気が遠くなる程の月日を超えて見た人の世は、
何度瞬きをしても衰えない輝きと美しさに満ちていた。
「 変わりゆく時代とは裏腹に、変わらないものもまた存在する 」
「変わらないもの」
「 そう。...争いさ 」
幾度となく繰り返される争い。
時代が変わってもそこだけはいつの時代だって変わらない。
奪い、奪われ。
人はそうして悲しみに嘆いても尚、争う。
「 鬼は人を喰う為に牙をむく。御前達は人を守る為に戦う。
争うのは、人であるが故だと私は思う。
鬼となっても生まれた時は人だから。争うのだよ 」
竈門炭治郎の瞳が、ゆらりゆらりと揺れる。
そこにある感情は妹を思うものばかりで、
思わずおいでと手を伸ばせば、彼は従順に擦り寄った。
「 そんな人間を、愛しいと思うよ 」
･
続く (更新停止中)
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まゆゆ(プロフ) - すっごく面白いです! (2021年6月19日 0時) (
レス) id: b7969430ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくり四つ葉 - ドストライクです。更新頑張ってください！ (2020年9月2日 19時) (レス) id: 135b7cf6d1 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 面白いです！更新頑張って下さい！ (2020年8月14日 8時) (レス) id: e4678e2dff (このIDを非表示/違反報告)
青春を返せ(プロフ) - うわああああ！！この作品めっちゃ好きです！続きが気になる〜！更新頑張ってください！応援してます！ (2020年5月18日 17時) (レス) id: f38cd6c1be (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 頑張って下さい！ 応援してます！ (2020年5月17日 22時) (レス) id: f273bc5d9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：M子 | 作成日時：2020年5月4日 3時
