海と鼻歌(Yk) ページ7
*
寝れない身体を起こして
晴れない心をかき消す様にワイヤレスイヤホンで
音楽を聴きながら自転車に乗って
宛ても無く走った。
河川敷がみえて
足を止める。
薄暗い空が朝を迎えようとしている。
私はまだ
暗い夜から抜け出せずにいるのに。
一人、この世界で取り残されたような気持ちになって
感傷に浸る自分に呆れた笑いと溜息が出た。
自転車を適当な所に停めて
誰もいない浜辺まで歩く。
波の音が私の寂しさを攫ってくれるような気がした。
「きれーだな...」
隣をみれば
スタイルの良い高身長の男の人が
私と同じ様に海をみつめながら呟く。
その横顔が朝日に照らされて
ふわり風に靡く髪が光って
絵になるな、なんて思って見惚れていた。
「ね？綺麗だね」
「えっ...あ、そうですね」
私の視線に気付いたのか
男の人はこちらをみて
優しく微笑んでくれた。
「なんか、自分の悩みが小さく感じるよ」
「そう、ですね」
私と同じようにこの人も寝れない夜を過ごしたのかな。
波の音が耳に心地よく鳴って。
理由は沢山あったかもしれないけど
流れた涙は嫌じゃ無くて。
「名前なんて言うの？」
「...え？」
「俺は洋平。君の名前教えてよ」
「A、です」
「Aちゃんね。覚えました」
私の涙を長い指先が掬う。
触れられた所から微かな熱を感じて
洋平さんをみれば
クシャッと笑って
また海を見つめていた。
しばらくの間
二人に訪れた静寂が
洋平さんの鼻歌で心地良いものに変わっていく。
あんなに眠れなかった夜を恨んでた自分は
いつのまにか何処かへ消え去っていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
話を書くにあたって(長編は別だよー)悩みだったり不安だったりは人それぞれ違うと思うのでそこは抽象的な表現を意図的にしてたりします。
恋愛だったり、仕事だったり、人間関係だったりと...
自分の境遇に置き換えて読んでいただけたら嬉しいなと思います。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 21人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まるのうち(プロフ) - ノアーさん» コメントありがとうございます！好みに沿えて嬉しいです🍀 (2022年10月10日 0時) (
レス) id: 214dd9e1b7 (このIDを非表示/違反報告)
ノアー(プロフ) - お話すごく好みです🤧更新楽しみにしてます〜💕 (2022年10月9日 22時) (レス) @page6 id: 2de0e561d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まるのうち | 作成日時：2022年9月26日 0時
