◾︎光陰矢の如し（⚔️R.Y）. ページ23
黎明、隣にあったはずの温もりが消えていることに気づいて目が覚める
朧気な視界で辺りを見渡すとベランダで紫煙を立てるその人を見つけて安堵
「…やばな」
『…起きたんすね』
無意識に呟いた名前は相手の耳に届いたみたいで、簡易灰皿に火を押し付けてから寄ってくる
その一挙手一投足がどこか様になっていて見蕩れそうになって
ベッドの端に腰掛けた矢花の手に遠慮がちに私の手を重ねる
「たばこくさい」
『…シャワー浴びてきます』
「…そこまでしなくていい」
嫌いな臭いが浄化されるより、骨張ったその手を離したくない
そんな心の内はこの鈍感男にはバレてないと思う
如何わしいホテルのベッドで寝ても抱き締める以上のことをしてこなかった矢花に何の期待をしても無駄だとはわかってる
でも分厚い壁を取っ払うためのアプローチはやめられなくて
矢花の手に触れている部分に熱が収束していくのがわかる
これには気づかないでほしいのに細いその指が私の指を絡め取ってくるから…ほんと、ずるい
『…狡いっすね』
「…わたしのせりふ」
『えぇ、俺っすか？』
「…うん、やばながずるい」
『…なら、Aさんは恐ろしい人ですね』
そう語る矢花の視線は繋ぎ合わせた互いの手から横に座る私へと移る
永遠にも感じる一瞬の時間に幸福を感じたのも束の間で、矢花の顔が近づいてきて受け入れるように目を瞑る
数秒、続きを望んだ私とは裏腹にすぐに離れていく矢花は耳まで赤く染めていて
あぁ、なれてないんだな
そう思ったら愛おしくてたまらないけど、これ以上手を出してはいけないって自分でもわかっているから少し距離をとる
『…嶺亜くんには、内緒ですよ』
「っ…やっぱりずるい」
『まぁ、嶺亜くんがいないと分かっている飲み会で持ち帰ってるんで』
小声で呟いた言葉は私の
でも互いにこれが最後だってわかってるから
『じゃあ、そろそろ帰りますか』
「…うん」
出口に足を進める矢花
その後ろ姿を追いかけながら、最後に全てを置いていきたいと思って矢花の腕を引く
『っ…！』
「…バイバイ、黎くん」
口元を押えて放心している矢花の顔を目に焼き付けてホテルを後にする
明け方の日差しは残酷な程に眩しく輝いていて、先程までの出来事を夢だと錯覚させてくる
サヨナラ、本当の気持ち
．
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鈴黎(プロフ) - まっちゃさん» コメントいただきありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです！検討しますね💭 (2022年11月7日 0時) (
レス) id: ce9b284c17 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - 初めてコメントします！内村くんのお話展開が気になりすぎて、、、ぜひ長編待ってます、、！(̨̡ ⸝⸝ᐢ.ˬ.ᐢ⸝⸝ )̧̢ (2022年11月4日 14時) (レス) @page19 id: 9e20ae1596 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈴黎 | 作成日時：2022年10月25日 21時
