Short Stories

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ドンッ
『ほんっとに！キムさんが多過ぎる…！！』
もう本日何杯目かになるビールを飲み、机にグラスを叩きつけるように置く私と


「ヤー。それを俺の前で言うなよ〜！」
なんてひゃっひゃっと変わった笑い方をする目の前の男はキム・ソクジン。
そう、この無駄にイケメンな男もキム！


日本で言う、佐藤さんとか鈴木さんみたいに多いとは分かってたけど…それにしても、多い。
会社の1/3位はキム性だと思うし、今いるこの居酒屋にもキムがいっぱい居るんだよ！絶対！


『だってさ、フルネームで呼ぶ習慣が日本に居た時はなかったんだよ？それなのに、韓国に来た途端キムさんが多すぎるせいでフルネームで呼ばないと誰の事だか分からないとか言われて…韓国語覚えるのでいっぱいいっぱいなのに、人の顔と名前までフルネームで覚えるなんて…無理！やだ！無駄だよぉ〜・・・。』


完全に酔っぱらった私を見て楽しそうに笑っているソクジンは、本社に私とは別の支店から移動してきた同僚で、週末になるとこうして一緒にご飯を食べたりお酒を飲んだりしながら韓国語を教えてくれる。
優しくて面白くて頼りになる私の先生であり、好きな人。

今のこの関係性を壊す度胸を持ち合わせていない上に、慣れない環境での仕事を覚えるのにいっぱいいっぱいだから、好きだなんて言えないけど。


「確かに韓国にはキムが多いけど、うちの会社は異常な程に多い気がするよ。キム一族が経営しているだけあってね！ひゃっひゃっひゃっ！」


いつもならソクジンと一緒になんでも笑い飛ばせるけど、今の私にとっては笑い事ではない。
だって、今日はそのキム違いのせいで渡す資料を入れ違えて、取引先にすっっっごく怒られてしまったんだから。

・・→←Kim　SJ

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