瑞色日記 (ページ22)

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# MIZUKI

井上「いた、」

教室にひとりだけぽつんと佇むAちゃん

井上「残ってくれてるってことは、まだ俺のこと好きでいてくれてるってことだよね」

「 ……そんなこと言うために呼んだの？」

井上「ちがう、待って」

呆れたように教室を出ていこうとするから慌てて引き止めて、逃げないように腕を掴んだまま話を続ける

井上「その……ごめん」

「何に対して謝ってるの」

井上「ずっと寂しいおもいさせてたのも……キス、されたのも、」

「 ……そう、」

井上「それに、あの図書館で抱きしめられてたのも、正直すごくムカついたし、嫉妬でおかしくなりそうだった。でも言えなかった」

「どうして？」

井上「独占欲が強いなんて、知られたくなかった」

「 ……それくらいの方が嬉しい。わたしだって独占欲強いし」

井上「そう、なの？」

「瑞稀くんとあの女の子がキスしたの見た時、わたしもしたことないのにって、その唇に触れたくないっておもうくらい嫌だった」

井上「ごめん、」

「でも瑞稀くんはあの後すぐ突き放してたし、必死に口洗ってるのも見たし」

井上「え」

「だからなんか怒るのも違うかなって、そりゃまあわたしのことずっと放ったらかしで生徒会ばっかの瑞稀くんには今も怒ってるけど！」

井上「そっち、？」

「那須くんとのは、仕返し。あの子に頼んでやってもらっただけだから」

井上「え…、」

「だってそんなの、わたしだけ嫉妬してるのなんてフェアじゃないもん！同じ気持ち味わせたかったの」

井上「 ……バカ、」

掴んでいた腕を引き寄せてぎゅうっと抱きしめる

「苦しいよ、」

井上「それくらいでちょうどいいの」

「良くないもん」

井上「本当にごめん。でも今はAちゃんがそんなに俺のこと好きでいてくれたってことが嬉しくてしょうがない」

「うん、大好きだよ」

井上「俺も大好き」

「 ……ねえ、ちゅう」

井上「え、！？」

「上書きしないと、ずっとあの子のまんまでしょ。瑞稀くんの初めてのキス」

井上「なっ、何言って、」

「もう少ししゃがんで、こっち見て、」

井上「や、」

“ はーやーくっ ”
って急かされたら無視出来なくて、言われたとおりにすればちゅっと一瞬だけ触れた唇

「瑞稀くんのファーストキスは、わたしのだから」

井上「っ～、」

可愛すぎて、好きすぎて、苦しい