＊ ページ36
何かを言わなければ、そう思うも、何を言えば良いのか分からず声を出す事が出来ない。
「な……や…」
すると、ショッピさんが息を乱れさせたまま静かに何か呟いた。
『ショッピさん…？』
「何なんや……意味分からん…あんた一体何したって言うんすか…」
言葉を続けていく彼。俯いているから、どんな顔をしているのかは見えなかったが、その声から複雑な表情を浮かべているのだろうという事は容易に想像出来た。
「何か、何かあるに違いないんや…何か……」
明らかに正常では無い様子のショッピさんに、私が出来ることはあるのだろうか。
そう考えていた時だった。
思い詰めたように呟き続けていたショッピさんの言葉が、途切れたのだ。
「血…あんたの、血か…？」
少しの間の後、彼はそう言った。
私の血＿＿その言葉が出た瞬間、私は自分が今から何をされるのか悟ってしまった。
「あの人らが変えられてしまう程の血を持ってるって事か……あんたの血はやばいって聞いてたけど、どれ程かはまだ知らんしな」
あぁ、これは危ない。やはりそうだ。
「せや」
危険信号を全身で感じているのに、身体は恐怖に凍りつき、全く動く事が出来ない。なのに何故か、頭はやけに冷静に働いている。
「今ここで飲んでみれば分かるよな」
その言葉は、先程までの言葉と同じ静かさで言われた事を疑う程、はっきりと恐ろしい響きを持って私の耳に届いた。
ゆっくりと、私の首筋に顔を近付けてくるショッピさん。
抵抗しなければ。今の彼は正気ではないのだから、もしこの状態で血を吸われたら、殺されかねない。
しかし、何故だろうか。
彼の叫びを、あの複雑な表情を、コネシマさん達への気持ちを思うと、上手く声が出せなくなってしまう。
何故だかは分からないが、ここで彼を拒んではいけない気がした。
だからといって、このまま痛みを受け入れるのも、死ぬのも嫌だ。
どうすればいい…どうすれば……！！
必死に考えていると、一向に痛みが来ない事に気が付いた。
ショッピさんの動きが、止まっている。
一体どうして…
「なぁ、何しとるん？ショッピ君」
彼の声がした。
ふわりと向かい側の家の屋根から降りてきた、深緑の彼。
来てくれた、また助けに来てくれた。
『オスマン…さん……！』
押し寄せてくる安心感と喜びに、思わず涙が出そうになったが、彼の纏う氷のような雰囲気にそれはすぐ引っ込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 986人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユドーフ(プロフ) - 怪盗Nさん» ありがとうございます！！！嬉しすぎます...自分の好みが怪盗Nさんにも好いてもらえて良かったです！頑張ります！！！！ (2020年2月19日 18時) (
レス) id: 7bf2f68390 (このIDを非表示/違反報告)
怪盗N(プロフ) - 控えめに言います。最高です。真面目に私の好きなもの詰め込んでる作品です！更新頑張って下さい！ (2020年2月18日 18時) (レス) id: 0017a7a923 (このIDを非表示/違反報告)
ユドーフ(プロフ) - ルーンさん» ルーンさん…！！発狂寸前だなんて…本当にありがとうございます！！はい！復活したので、また更新していきます！コメント毎回とても嬉しいです！本当に、本当にありがとうございます！ (2020年1月7日 0時) (レス) id: b6d5c53f52 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - コメント失礼しまーす！！ はい…うるさいっすよね。だって一番最初から見てたから＾＾続編来たとき発狂寸前でした…インフルエンザ辛いと思いますが、頑張って治してくださいね！応援します！ (2020年1月2日 2時) (レス) id: 0c6e119b4e (このIDを非表示/違反報告)
ユドーフ(プロフ) - ルミさん» コメントありがとうございます！！そう思ってもらえて良かったです！とても嬉しい言葉をありがとうございます...！はい！！頑張ります！ (2019年12月19日 23時) (レス) id: 9a9478c8c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユドーフ | 作成日時：2019年12月17日 23時
