第2章 ページ9
「やめろ……やめろ……!!」
エイトがいなくなり、代わりに見慣れた二つの顔が現れたかと思えばアレルは壁がわに必死に後退りをしていた。どんなに下がっても目の前の剣先が下りる気配はない。二つの見慣れた顔ーーアレンとアレフはどんどんと近付いてきた。
「どうしちまったんだよ……お、俺を殺すのかよ」
「あぁそうだ。悪いなご先祖」
言葉が震えるアレルに、アレンは酷く冷たく言い放つ。
ーーご先祖、これが最後だ。
アレンはそう言うと、今度はアレルが身に付けているロトの剣を鞘から抜き取る。かつて世界を救ったその剣で、勇者をこの世界から消し去ろうとしたのだ。
「……やめろよ。俺がいなかったらお前らはーー」
「そんなの知っている。でも俺たちにとってお前は邪魔な存在なんだ」
アレフの赤い瞳が怪しく光る。背中が壁につき、もうアレルに逃げ場はない。もうここで最後なのか。再び世界を救うことは出来ないのか。ーー意を決して、アレルは固く目を瞑った。
刹那、大きな音をたてて先程の扉が開いた。アレルは思わず目を開ける。エイトが帰ってきたのだろうか。
「エイト!」
思った通り、エイトが姿を現した。その瞳が赤黒く染まっているとも知らずに、アレルはアレンたちを押し退けてエイトに近寄る。
「お前、いきなりどこに……っ!!」
アレルは口を開いたままその場に倒れ混んだ。腹部を押さえているからに、エイトが手に持つ剣でアレルを刺したのだろう。ーーこれには当然アレンたちも驚き、目を見開いている。時が止まったように誰も動かなかったが、やがてエイトが口を開いた。
「僕たちは勘違いをしてたんだよ」
苦しそうな表情を浮かべながらアレルはエイトに目を向ける。さすがは勇者、まだ息はあるようだ。
「ーー良いかい3番目」
再び仲間に裏切られたアレルは小さく舌打ちをすると、エイトの声に耳を傾ける。今さら何を言おうとするのか。
「ーー世界は君を殺さない。君が世界を殺すんだ」
君はこの救いようのない世界を救おうとした。それだけでもう十分だ。これからは一緒に世界を滅ぼそう。
そう言うかのように、エイトはアレルと目を合わせた。青色の瞳はだんだんと輝きを失っている。
「……それでも俺は世界を救う。だって、それが……英雄だろ?」
どんなに仲間に裏切られようとも、どんな手を使ってでも、世界を救おう。
ーーそれはかつて、アレルとエイトの二人の勇者が交わした約束だった。エイトはもう忘れてしまったのか。くだらない、と言い放ちアレルに冷たい瞳を向けた。
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夏目 織(プロフ) - 神無さん» わーーっありがとうございます~!! 次も楽しめるような内容にしていきたいです…!!応援嬉しいです!コメントありがとうございました(*´ω`*) (2017年6月18日 23時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
神無 - めっちゃ面白いです!つぎが楽しみです!逃げ場がなくなった5人はこれからどうなるのか…次も頑張ってください!突然失礼しました! (2017年6月18日 19時) (レス) id: ece3dfc8e2 (このIDを非表示/違反報告)
夏目 織(プロフ) - 兎人さん» それ私も思った……() 皆どうなるんだろう……リュカはあんなこと言っちゃったし当分闇堕ちかな~~ ありがとう!次も頑張ります(`・ω・´) (2017年6月17日 23時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
兎人(プロフ) - リュカさんラスボス的な雰囲気を醸し出していると思いました(語彙力)。わー……! もうなんかみんなどうなるのかハラハラする……! 闇堕ちから元に戻るのかどうか楽しみ! 次も頑張ってね! (2017年6月17日 22時) (レス) id: 1a2d7ae52f (このIDを非表示/違反報告)
夏目 織(プロフ) - シーナ@もこたん大好きさん» 楽しく読めたようでよかった…!!ありがとうございます~!語彙力なんて逆に欲しいくらいですけど(笑)この先全然考えてませんが楽しめるような内容にしていきたいです…!! (2017年5月21日 22時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 織 | 作成日時:2017年2月19日 12時