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「……ソロ」
壇上に立つソロをアレルが睨み付けながら口を開く。他の五人の勇者たちは影で姿がよく見えないが、きっとリュカ達だろう。それを確信するとアレルは階段を登りゆっくりとソロたちに近付いていった。
「……何してんだよ」
「何って……決まってるじゃないか、世界を壊すんだ」
ソロが黒く染まった切れ長の瞳でアレルを睨み返す。兜の青い宝石は怪しい光を放っていた。
「まだそんなこと言ってるのかよ」
「それはこっちの台詞だ、アレル。終わらない世界を壊したって何の問題もない」
――終わらない世界。それはこの世界は救いようのない世界なのか。この先も闇に包まれて、勇者達がなにもできないまま終わりを迎えてしまうのか。
「目を覚ませよ」
震える声で、アレルは再び口を開いた。
涙が頬を伝い、やがて真っ赤なマントへ落ちていく。傷だらけになったそのマントは、いつでも勇者と共に戦ってきた。
「世界を救うって決めたじゃないか」
例えロトの血筋を引いていなくても、光を取り戻すと誓ったはずだ。それなのにどうして、こんなにも簡単に世界を壊そうとするのだろうか。自分達が造り上げてきた世界を壊そうとする意思が、アレルには理解不能だった。
「……お前はいいよな」
ソロが何かを思い出すように、小さく呟く。黒く染まった瞳はだんだんとかつての碧色を取り戻しており、涙が綺麗な雫となってこぼれ落ちた。
「俺は勇者になんてなりたくなかった」
ソロの呟きに、思わずそこにいる全員が口を閉じた。
――自分が勇者ではなければ、大切な人を失わずに済んだ。だからこんなにも後悔をしているのだろう。あのとき自分が魔物に立ち向かっていたら、彼女は死なずに済んだのに。
「……前に進めよ。いつまでも過去に引きずられて生きてたって、彼女も悲しむだけだろ?」
「……シンシアが?」
アレルの言葉に、ソロは彼女――シンシアと過ごした日々を思い出す。あぁそうだ。最期に前に進むって決めたんだ。あのとき、荒れ果てた花畑の上で。
「…………そうだな。俺も前に進むか」
ソロの瞳は完全に碧色に戻り、兜の宝石は希望の光を放っている。
――私がいなくてもあなたは大丈夫。きっと、立派な勇者になれるわ。かつてシンシアに言われた言葉を思い出しながら、ソロはゆっくりとアレルの方に歩み寄った。そして小さく口を開く。一緒に世界を救いに行こう、と。
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夏目 織(プロフ) - 神無さん» わーーっありがとうございます~!! 次も楽しめるような内容にしていきたいです…!!応援嬉しいです!コメントありがとうございました(*´ω`*) (2017年6月18日 23時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
神無 - めっちゃ面白いです!つぎが楽しみです!逃げ場がなくなった5人はこれからどうなるのか…次も頑張ってください!突然失礼しました! (2017年6月18日 19時) (レス) id: ece3dfc8e2 (このIDを非表示/違反報告)
夏目 織(プロフ) - 兎人さん» それ私も思った……() 皆どうなるんだろう……リュカはあんなこと言っちゃったし当分闇堕ちかな~~ ありがとう!次も頑張ります(`・ω・´) (2017年6月17日 23時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
兎人(プロフ) - リュカさんラスボス的な雰囲気を醸し出していると思いました(語彙力)。わー……! もうなんかみんなどうなるのかハラハラする……! 闇堕ちから元に戻るのかどうか楽しみ! 次も頑張ってね! (2017年6月17日 22時) (レス) id: 1a2d7ae52f (このIDを非表示/違反報告)
夏目 織(プロフ) - シーナ@もこたん大好きさん» 楽しく読めたようでよかった…!!ありがとうございます~!語彙力なんて逆に欲しいくらいですけど(笑)この先全然考えてませんが楽しめるような内容にしていきたいです…!! (2017年5月21日 22時) (レス) id: e4a43027c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏目 織 | 作成日時:2017年2月19日 12時