思い出の中のキクラゲ4

なんてことない日常　suda ページ18

「菅田さんは掴めそうで掴めない

柔い空気を纏っていますよね」


心地よい美しい声に聞き惚れながら


長いまつ毛で瞬きしている

彼女を見つめる。


なぁ、


俺のこの心臓の音、聞こえてる？


いくら目で訴えたところで

ん？という可愛い顔をして見つめ返してくるだけ。



あかん、俺の方がノックアウトしてまうて。




んもぅ、あざといんやから。





いつの間にかAちゃんへのピュアな恋心が日常へと溶け込んでいった。



あかんなぁ、可愛いなぁ。



それしか言葉が見つからない。



コロンビア産のコーヒーの香りも、吉沢店長のスッと整った鼻筋も、最近観葉植物をパキラからガジュマルに変えたことも、流星の連れが賢人推しになっていることも




そんなことどーでもいいくらい




俺は




くしゃみを数回して少し寒そうに肩を震わせ
腕をさすりながらクーラーを見つめるAちゃんばっかり見てまう。






最近コテを使ってヘアアレンジすることを覚えたみたいで
なんか横の毛がクルクルしてる。



あかん、可愛い。





阿呆な顔してる俺を鏡越しで見てしまい、ニヤニヤニタニタしてるだらしない頬の緩み具合にショックを受けた。






今日は店内に吉沢さんとAちゃんと俺3人がいるから結構暇なんよ。




だから布巾で消毒してコップを拭きながらAちゃんをさっきから観察しとるわけやけど、







「...ふぅ〜」




さっきからAちゃん変な汗かいてへん？






なんか、嫌な予感がするなぁ。




...気のせいか？

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