Undulation【長谷川慎】

34（慎side） ページ34

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慎side


壱馬さんから聞いたのは、いつも笑顔のAから連想することは確実に出来ないような話


出会った頃から、憂いを帯びた、何か悲しさや切なさを抱えたような目をしていた


常に何かを抱えているようなそんな目


それが理由になるかどうかはわからないけど、初めからAを目で追ってたのはそういうことで…



腕の中で泣いたあの日も、仲間に囲まれたあの日も、泣く事を選ばなかったAを見た時


簡単に涙を流すことができない所に居た…？


そう思ったんだ




壱「…ちっちゃい頃はよう泣く子やったけどな」

翔吾「いつからか泣く事を我慢するようになっちゃったか」

樹「でも、Aのお母さん問題は、継続中って事ですね…」

壱「せやな…」




きっと、Aにも何か考えがあって家を出たんだろうから

夏に出会ったばかりの奴に、あれこれ言われるのも嫌だろう

ただ、彼女にしてあげられる事は…



慎「俺達が、Aの居場所になってあげられたらいいですよね」

樹「…俺もそう思ってた

俺らは男だから、全部を理解してあげる事は出来ないかもしれないけど…」

翔吾「頼れなかった分、俺らの事これから頼ってくれるようになったらええな

まっ、ここで出会えたのも何か縁やろうし！な、壱馬！」

壱「お前ら…」



Aを思う気持ちは皆同じ

…それを越した感情を持つ仲間が何人いるかは分からないけど…



壱「お前らに話せて良かったよ」

翔吾「俺はたまたま居ただけやけどな？笑」



平成最後の夏にAと出会えた事、何か意味があると思う


その小さな身体に抱えている何かを、取り除いてあげられたらいい




壱「この事、他の奴に言うつもりはない
Aの事任せられるんは、一人しか居らん」



壱馬さんは、俺の目を見て言った



翔吾「え、俺〜？」

樹「流れ的にわかりますよね今の」

翔吾「壱馬パパに託されたのはまこっちゃんって事かぁ〜…あぁー悔しいっ」



泣き真似をする翔吾さんと、慰めるフリをしている樹さんに聞こえないように、壱馬さんは少し顔を近付けて言った



壱「…ほんまは俺が、Aの側に居ってやりたいんやけどな？」

驚いて顔を見ると、ニコッと笑った



壱「昔からアイツのこと好きに決まってるやん、あんなほっとけない女居らんやろ」



自分の気持ちを認めた上で、俺に任せてくれる壱馬さんは、きっと男の中の男


壱馬さんの気持ちを無駄にしないように、俺がAの力になってやるんだ

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