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六年間、京都に住んでいたけれど


こんなに街を見渡せる場所があったことも


好きな人と素敵な景色を見ているこの時間が


こんなに幸せな気持ちにさせてくれることさえも


全く知らなかったよ











慎「A、泣いてる」


「え?…あっ、ほんとだ笑」


慎「なんか俺、嫌なことした…?」


「ううん、違うの」


慎「じゃあ何で泣いてんの…」









気付けば頰を伝っていた涙


私ってこんなに涙もろかったかな?


しばらく人前で流さなかった涙は今、私の頰に手を添えて拭ってくれている慎のおかげで


大きくて優しい手が動く度に簡単に箍は外された









「何でだろう…幸せだから、だと思う」


慎「この状況でそんな事言うの?」


「ほんとのことだもん」


慎「…もっと警戒しなよ」


「慎だもん」


慎「…俺だって男なんだけど」









分かってるよ…


バレないように平静を装ってたって、手が触れてるだけで胸の高鳴りは収まってない


改めて言われなくたって、意識してるよ、男だって









そう心では思っても、口に出すことが出来ずに真っ直ぐ目を見つめていると









慎「ふ笑 ださいね俺」


「何でよ、ださくなんて…」


慎「じゃあださいついでにださいこと言うけど」


「…え?」









ちょっとだけ困ったように笑うと、頰の涙を親指で最後にスッと拭ってから、肩へと両手をおろした











慎「すっごい人見知りで壱馬さんの後ろに隠れてたり、でも働き出すと誰よりも頑張ってるし」


「…うん」


慎「かと思うと危なっかしくて、いつコケるかわかんないから全然目離せないし」


「…うん笑」


慎「ほんとは誰より弱いくせに、泣くの我慢してるし…俺の前では泣くようになったけど」


「…」









文句でも言われてるのかと思って聞いてたけど

段々と声のトーンは真剣になってきて









慎「波に向かってくA見たときから、
なんか目が離せなくてさ」









あの時も、慎が波から救ってくれたんだっけ


















慎「好きだよ、A」









肩に置かれていた手は、
気付けばまた頰へと移動していた


親指を動かして頰を拭ってくれる慎の瞳を見ていて、あぁ、私また泣いてるんだ、って









慎「どうしようもないくらい、好き」









胸の奥が切なくて、凄く苦しくて







" 幸せ "







今を言い表すなら、きっとその二文字



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MAO - とても素敵なお話で、一気に読めました! (2020年1月11日 22時) (レス) id: 7e55f29c35 (このIDを非表示/違反報告)
- 蘭さん» 楽しみでたまらないです!待ちきれません (2019年8月10日 16時) (レス) id: 772a3fabcd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ★さん» 物語が思い浮かんだら、再び慎君で書かせて頂こうと思っています!楽しみに待っていて下さったら嬉しいです(^^) (2019年7月19日 0時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)
- また慎くんで書いてください! (2019年7月15日 21時) (レス) id: b78fe88ec4 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - shyboyz17mさん» 最後まで読んで下さり、こちらこそありがとうございます!すごく嬉しいです泣 (2019年3月25日 23時) (レス) id: 9208e0cc5d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年9月10日 1時

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