エゴのままでいいからただ、知っていて ページ2
「貴志君。」
草をかき分けた先で彼を呼ぶ。
彼は私がいる事に驚きつつも、予想はしていたのか眉尻が垂れて困った顔をしている。
きっと困らせてしまうけれど、これだけは言わなければならない。三篠の行為を全力で阻止しようとしていない私が言える事ではないかも知れないが、それでも伝えなければならない。
「貴志君、友達の家に泊まってるって聞いたよ。」
「なんで、それを…」
ああ、やはり嘘なのだ。野宿でもするつもりだったのだろう。もしかしたら既にしていたのかも知れない。
確信はしていた。彼は本当に人を頼る事をあまりしない。
「塔子さんから、私の家に電話がかかって来たの。」
「なっ！？」
ほんの僅かに滲む困った様な笑みが消え、彼は目を見開いた。そこに見えるのは焦燥だ。
彼はきっと、嘘が塔子さんにバレたのではないかと焦っている。
「貴志君、私もうまく言えないけれど、私が言えた義理じゃないけれど、人との関わりは一方通行ではないから、もっと自分を大切にしてもいいんだよ。貴方を大切に思ってくれている人はちゃんと居るから。」
優しい嘘をつく優しい人が、苦しむ様なんて見たくない。
「すぐに信じる事は出来ないかも知れないけれど、それでも貴方は、貴方を大切に想う人の、想いを受け止めて、自分を大切にして……私はそうして欲しいと、私自身もそう出来たらと思うよ。」
綺麗事だ。
唯のエゴだ。
それでも、所詮は綺麗事だと切り捨てるよりも、信じてみたいと思った。それは弱さかもしれない。
私が私を大切にする事は酷く難しいけれど、誰かが心の隅にでも私を置いてくれているのなら、我が身可愛さ故の自愛ではなく、誰かがくれた想いを受け止める。
そうできたなら…
「……塔子さんには私の家でお泊まり会をやってるって伝えておいたから、そのていでお願いね。」
「ごめん。俺、迷惑ばっかりかけてるよな。でも、嬉しいって思ってしまうんだ。」
そうできたなら、きっと、もっと鮮やかに世界は色付くのだろう。
「そっか……うん、それが聞けて私は、嬉しい。思ってしまうなんて卑下する様に言わないで。何より、貴志君がそう思ったなら間違いとか正解とかはなくて、きっとそれだけが本当なんだから。」
それは私の押し付けかも知れない。自分勝手な理想を、優しく見せかけて彼に押し付けているだけなのかも知れない。
そんな不安を君はいつも…
「ありがとう。」
吹き飛ばしてくれるのだ。
「ありがとう、A。」
彼を護る術をくれたあなたに→←来てしまうんだねー夏目sideー
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89*(プロフ) - あまねさん» あまね様 返信遅くなりました。コメントありがとうございます。2023年内の更新は出来ませんでしたが、2024年1月中には更新する心算で現在構成を練っております。更新が滞る最中、こうして愛を伝えて下さり、本当にありがとうございます。 (1月3日 23時) (
レス) id: df3a537f9a (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってますからね！！！、！この作品今最大級に愛してる！！！！！！ (12月31日 1時) (レス) @page3 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 黒灰白有無％さん» 黒灰白有無％様 返信遅くなりました。コメントありがとうございます。1年以上音沙汰もなく申し訳ない限りです。この作品への"好き"を伝えて下さり、ありがとうございます。まだ待っていてくださる人がいる事実に、感謝を。今年こそは投稿できるように頑張ります。 (8月17日 3時) (レス) id: df3a537f9a (このIDを非表示/違反報告)
黒灰白有無％(プロフ) - コメント失礼致します 夢主と環境が本当に似ていて共感する処や,心に差さる台詞なども多くとても大好きな作品です。ストーリーも面白く設定も凄く好きです！色々大変だと思います,無理しないで自分自身のペースで頑張ってください！！ずっと応援しています！ (8月12日 10時) (レス) @page3 id: 00e0ebd256 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 藤凛ゆきなさん» 藤凛ゆきな様 コメントありがとうございます。返信が遅れてしまい申し訳ございません。殆ど更新が出来ていない状況ですが、この作品をお読み頂けたこと光栄に思います。共感して頂ける、この作品が誰かの心に届くことが喜ばしく思えます。応援ありがとうございます。 (2022年5月23日 7時) (レス) id: df3a537f9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：89* | 作成日時：2021年3月4日 23時
