君の笑顔が好きだった4【夏目友人帳】

ねじまき式のカラクリみたいね ページ46

「大丈夫？」

「ああ、大丈夫だよ。ありがとう。」

「なら、良いんだけど…」

そんなやりとりを今日だけで3回ほど行なっている。
大丈夫かと聞けば貴志君は大丈夫だと返す。頼って欲しいと言っても、それは変わらないだろう。それが彼の優しさでもあるから。

しかし、とても大丈夫そうには見えなかった。

登校時には欠伸が多かったし、授業中はうつらうつらとしている……それは、まあ、今までにも何度かそんな日はあったけれど…
しかし、休み時間には机に突っ伏してノートには黒い人間の形をしたシルエットと、"メリー"の文字がある。

追い込まれない筈がない。5日かけて生気を吸うという事は、徐々に体調だって崩していくだろう。

それなのに、その筈なのに…

「A、今日はちょっと用事があるから先に帰ってくれないか？」

強がりじゃない。それが当然だと思っている。頼らない事が、彼にとっての当たり前なのだ。私だって人の事は言えないのに、そんな事を考えてしまう。


ああ、最初に手を伸ばすのを躊躇したのは、私だったじゃないか。三篠の気持ちとか、貴志君の関係とかそんな事を言い訳にして、何もしなかったのは私なのに、あろう事か私は…

「気を、つけてね。」

私は、何も出来ないのではなく、しない事を選んでいた。選んでしまっていたのだ。挑む事すらしなかったのだ。私は…




とぼとぼと家に帰る。いつもよりゆっくり、誰も一緒ではないのに、何故か歩くペースは落ちるばかり。無理にでも動けば良かったのだ。
今の私はねじまき式のカラクリの様に、与えられなければ何も出来ない、していない。

何度でも足りないなんて事ないから→←寄り掛かってしまうからー夏目sideー

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