認めないし、そのまま返そう ページ37
はぁ、はぁ…
ガサリ、ガサッ……バキッ…
荒い息遣いと、草木を掻き分け枝を踏み折る音が凄まじい勢いで駆ける。
キーンとした不快な音は私を捲し立てる様に、段々と大きくなってきている様な気がした。
もっと早く、早く彼の所へ！
何かを企んでいる様子の三篠を問い詰めたら、タチの悪い妖怪に呪いを掛け"させた"と言っていた。
これは試練だとも聞いたが、理解は出来ても納得できる筈がない。
友人帳に名前を預けるという事は、持ち主に従うという事だ。自分を従える者の力量を測りたいと思うのも、無理はない。
レイコさんとは違って、貴志君は友人帳を受け継いだだけだから。
けれど、彼の命を賭ける様な行為など…
理解しても認められる筈がない。
目の前にある大きい茂みなど、気にも止めず突っ込んだ。
枝が私の頰を、腕を、脚を引っ掻くのなんて気にならなかった。折ってしまった植物の生命に、少したりとも詫びる気持ちなど湧かない。
それよりも、大切なものがあるのだ。
色素の薄い彼が見えた瞬間、私は茂みの中から叫ぶ様に彼の名を呼んだ。
「貴志君！！」
「えっ、A！？今日は用事があったんじゃ…」
目を丸くして此方を見る彼の左腕には、白い包帯が巻かれていた。
力が抜ける。さっきまで風を受けて冷たいくらいだった頰が一気に熱を持ち、ビリビリと筋肉が痺れる様だ。脇腹が痛いし、脚や裂傷も段々と痛みを訴えてくる。息はゼェゼェと落ち着かない。
「だ、大丈夫か！？」
慌てる貴志君の顔が私より30�儖幣紊眈紊妨�えるのだから、私は座り込んでいるのだろう。
彼は直ぐに同じくらいの目線になって、私の背を戸惑いがちにゆっくりとさすってくれる。
それがなんだか気恥ずかしくて、視線を下げる。
下を向く私の耳に、艶やかな声が届いた。
「A、夏目と知り合いだったのかい？」
貴志君の事ばかりで失念していた。
驚いた様に此方を見る貴志君を一瞥してから、息を無理矢理に整えて私はその声に告げた。
「ヒノエ……貴志君は、友人だよ。」
「そうか、そうだったのかい。」
予想に反して、彼女は笑っていた。
もっと責められるかと思っていた。あんなに彼女が焦がれているレイコさんの事を、意図的に隠していたのだから。
「ありがとう、A。」
感謝など、
「隠していてくれたんだろう？」
責められるくらいが丁度いい。
「本当に、あんたは優しい子だよ。」
本当に優しいのはいつも、私を優しいと言う人の方だ。
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89*(プロフ) - ぱららさん» ぱらら様 コメントありがとうございます。素敵だと言ってもらえて、とても嬉しく思います。更新速度が遅く、お待たせしてしまうのが心苦しくもありますが、年明けからは多少なり余裕が出来ますので、お待ち頂ければ幸いです。今後とも宜しくお願い致します。 (2020年12月21日 22時) (
レス) id: 514fce46fd (このIDを非表示/違反報告)
ぱらら(プロフ) - とてもお上手な作品です！私は未熟者なのでとても素敵だなぁと思います！更新とか頑張って下さい！楽しみにしてます！ (2020年12月19日 18時) (レス) id: 528bfd8f20 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 日向葵さん» 日向葵様 お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。来月辺りから更新頻度を上げられればと考えておりますので、これからもよろしくお願い致します。 (2019年7月6日 16時) (レス) id: a2eb60a991 (このIDを非表示/違反報告)
日向葵 - とても素敵な作品です!!続きが気になります!! (2019年6月30日 16時) (レス) id: ea495e3633 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 望月凛さん» 望月凛様 色まで塗って頂けるとは……補足は特にありません。それくらい作者のイメージ通りです。素晴らしいイラストをありがとうございます。 (2019年2月1日 21時) (レス) id: fe7ba8f509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：89* | 作成日時：2019年1月10日 23時
