君の笑顔が好きだった4【夏目友人帳】

2周年記念「否定せず、然れども」 ページ22

鬱蒼とした森に漂う淀んだ空気を切り裂く様に、人間に出せる限界を遥かに凌ぐスピードで、私は走っていた。

「ウマソウナ、ニホイ？ニオヒ、ニオイ……」

後ろから聞こえる声に、私はスピードを緩め振り返った。大きく右手を引いた。
苛々する。どうしてこうも低脳なのか？

「喰エバ、オデハツヨクナル。」

こういう輩は同じ事しか言えないのか。人を喰らう妖怪には馬鹿が多い。
言葉が通じないっていうのは、苛々する。勿論言語が違うのならしょうがないと思うが、奴らは何故か同じ言葉を話すのだ。

同じ言葉を使っている筈なのに、全く話が通じない。
あと、

「私は食いもんじゃない！」

右腕を力一杯振り抜いた。
弾ける様な光を纏った私の腕に、歓喜の感情が湧き上がる。やっと形になってきた。

妖怪を追い払うための力。
そう言ってしまうと、なんだか悪者の様だが…
実際、妖怪にとったら私は悪者になってしまうだろう。でも見境なくこの力を使うつもりはないから、大丈夫だろうと思っておく。

この力は守る為に使いたい。
私の大切なモノを守る為に使いたい。
とはいえ、それで傷つくモノがいるのも事実。それを忘れるつもりはない。

忘れてはいけない。


気を抜いていた時、ガサリと茂みが揺れた。

「やはりあれは嘘だったのか。」

君見えてるだろと話しかけてきたのは、いつだったか道を尋ねてきた、片目に札を付けた怪しげな男だった。

続 2周年記念「否定せず、然れども」→←作者から２周年 追記 次回予告あり

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