きれいな音色に、浮き彫りにされた ページ20
「もし、もう一度弾くことが叶うなら、あなたの為に弾きたいと思っていた。アカガネ、聴いてくれますか?」
意識の外で紡がれた言葉の後に、音楽が流れた。
聴いたこともない様な、美しい音…
空気を揺らし、私の心に染み込んできた。
再び音を紡ぐことができる喜び。
純粋に友を想う心。
感謝の念。
そのどれもが明るい想いで、私の奥の方で燻る黒い想いが照らされて、昇華する様な…
とても、とっても言葉で表現出来ないくらい、素敵な音。
一時だけでも、悩みが吹き飛ばされる。
その代わりなのか、アサギの想いが、アカガネの想いが流れ込んでくる。
壬生様の前で、柔らかい笑みを浮かべながら、音を奏でるアサギ。
そしてそれを見守りながら、その音楽に魅せられているアカガネ。
この世のものではない様な、美しい場所。
やがて音楽が終わると、アサギは貴志君の体からスッと離れていった。
「世話になったな。」
出会った頃よりも、優しい表情をしてアカガネは私達に声をかけた。
アサギは腰元の
「これから、どうするんだ?」
「アサギを連れて里に帰る。」
「そう。寂しいけれど、きっとそれがいいね。」
「そうだな。またな、アサギ。」
別れの挨拶を交わし、アカガネ達はこちらに背を向けて歩いていった。その姿になんだか何かが込み上げてきて、私は気付いたら声を飛ばしていた。
「またね!」
一度こちらを振り返り、軽く手をあげたアカガネに私は、私達は手を大きく振った。
別れはいつまで経っても、慣れない気がする。
ふと、隣を見ると貴志君と目があった。
「Aには、ずっと居たいと思える場所があったか?」
「……うん、あるよ。」
私がずっと居たい場所は…
「俺はずっと必要ないと、そう思っていたんだけど……なんだか最近は、あまりそう思わなくなった。」
君の隣だという事はまだ内緒にしておこう。
「いや、本当は気付いていなかっただけで、Aと出逢った時からあったのかもしれないな。」
君のその笑顔が、守れる様に強くなるから…
その時までは、私の中に仕舞っておこう。
いつか君の笑顔が、大好きだって伝えるから…
その時までに、俺はもっと強くなろう。
"その時まで、君は隣にいてくれるだろうか?"
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89*(プロフ) - ぱららさん» ぱらら様 コメントありがとうございます。素敵だと言ってもらえて、とても嬉しく思います。更新速度が遅く、お待たせしてしまうのが心苦しくもありますが、年明けからは多少なり余裕が出来ますので、お待ち頂ければ幸いです。今後とも宜しくお願い致します。 (2020年12月21日 22時) (レス) id: 514fce46fd (このIDを非表示/違反報告)
ぱらら(プロフ) - とてもお上手な作品です!私は未熟者なのでとても素敵だなぁと思います!更新とか頑張って下さい!楽しみにしてます! (2020年12月19日 18時) (レス) id: 528bfd8f20 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 日向葵さん» 日向葵様 お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。コメントありがとうございます。来月辺りから更新頻度を上げられればと考えておりますので、これからもよろしくお願い致します。 (2019年7月6日 16時) (レス) id: a2eb60a991 (このIDを非表示/違反報告)
日向葵 - とても素敵な作品です!!続きが気になります!! (2019年6月30日 16時) (レス) id: ea495e3633 (このIDを非表示/違反報告)
89*(プロフ) - 望月凛さん» 望月凛様 色まで塗って頂けるとは……補足は特にありません。それくらい作者のイメージ通りです。素晴らしいイラストをありがとうございます。 (2019年2月1日 21時) (レス) id: fe7ba8f509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:89* | 作成日時:2019年1月10日 23時