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部活のことも考えて、歩いちゃダメと言われた私は保健室に連れていかれた。涼しくて気持ちいいけど、あの場で応援したかった…
ぽんちゃん走ってきた。ってことは今5走者目か。黒尾まであと何番だろう。アンカーは1周だから絶対ここからでも見えるはず…ってなんで気にしてるんだ?いやいや抜けた身としては結果は気になるでしょ。
「…あ」
1位集団の男子が4人くらい塊で走ってきた。もし私走ってたらアンカー私以外男子かよ。まあ勝つけど。その中に黒尾の姿を見つけて、思わず笑みがこぼれた。ここからゴールは見えないけど、何となく抜かして帰ってくるんだろうなって。
「あー暇ー」
閉会式終わるまで誰も来ないことをいいことに、余った体力を発散させるため声を出してた。
「ラーメン食べたーい。もっと走りたーい。」
「ぶっ」
「え?」
「お前、1人だからって…ぶっ」
「閉会式は?」
「別に出なくてもいいだろ」
意味がわからない。どうせなら全部結果聞いてきてくれればいいのに。出なかったら怒られるだろ。まあでもあの担任じゃ無理か。いないことに気づいてない。
「さっき本部覗いたら点数見えたし」
「うわ、ずるい。でリレーは?」
「1位」
「私たちの団は?」
「1位」
「やったー!」
最後まで参加出来なかったのは悔しいけど、1位なのは素直に嬉しい。また思い出が出来たな。
「ほいこれ」
「お、ありがと」
投げられたスポドリを有難く受け取って、一気に半分くらい飲んだ。運動の後にはやっぱりこれよ。美味しいー。
「足は」
「部活のこと考えたら歩くなって言われた。」
「帰りどうすんの」
「親が来てくれるって」
「へー」
私のベッドの隣に腰掛けた黒尾が、急に黙るからこっちも黙るしかなくなって、変な空気が流れる。ちょっと気まずいんだけど、なんか喋ってよ。さっきのこと思い出しちゃったりしちゃうから。
最近黒尾と2人になると心臓がうるさくなってくる。こんなこと今まで誰ともなかったのに。
話してる時も二人三脚の時も気にならなかった。やっぱり黙ってる時。変なくらい静かになる時。
「ね、ねえ。2位の団は?」
「覚えてない」
いつもなら返してくれるじゃん。なんでそんな顔してんの。黙ってないで何か話してよ。
「俺、お前のこと好きなんだけど」
「…はあ?」
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作者名:なつなつき | 作成日時:2020年4月15日 0時