ハグしてください〈ハイキュー短編集〉

#佐久早聖臣 ページ42

「佐久早くん」


「なんだよ」


「お願いがあります」


「なに」


ここは私の家。


正座をして向き合う私と佐久早くん。


はたから見たら異様な光景。


付き合ってるのにこの距離、この姿勢。


いや、姿勢はわざとだけど…


「あの、私は触っていいですか」


「は？」


「だって佐久早くん潔癖じゃん。手繋ぐとか、ハグとか色々…」


街を歩くカップルは楽しそうに手を繋いで、


身を寄せあって歩いてる。


佐久早くんが潔癖なのは付き合う前から知ってたけど


周りの人たちを羨ましく思ってしまう。


佐久早くん全然マスク取らないから


顔もちゃんと見れないし。


「なぁ、お前さ」


「はい」


「俺の事なんだと思ってんの」


「…えっと、佐久早くん」


「ちげーよ」


佐久早くんが自分の隣をとんとんって叩くから


少しびびりながらも隣に座る。


すぐ右に引っ張られて


気づいたら彼の腕の中にいた。


「俺、汚いものは嫌いなんだよね」


「私は…汚くない？」


「当たり前だろ。いつも手とか洗ってんの見るし。」


「そっか…」


安心したのと、嬉しいのとで


佐久早くんに体を預けたら、


「えっと…？」


見事に押し倒されて


佐久早くんの顔が上に。


｢Aには俺から触りたいかな」


「へっ…」


「さっき『色々』とか言ってたしいいよな？」

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