平穏 ページ39
「…ん」
ふっと意識が戻ってきて、
うっすら目を開けた。
「はよ」
私に腕枕をしながら微笑む勝己くんに
顔が熱くなる。
「最近慣れたと思ったのに、まだ赤くなんのかよ」
「だって、昨日…」
この先は言えなくて、口を閉じた。
ニヤニヤ笑う勝己くんは絶対確信犯。
「もっかいやるか」
「…？無理無理！死んじゃう！」
「嘘に決まってんだろ」
「え！？」
「意外としたいんかよ」
「それは違う…」
恥ずかしさに耐えられなくて布団に顔を埋めると
すぐめくられて抱きしめられた。
「悪かった。身体気使ってやれなくて」
「へーきへーき。元気だもん」
「嘘つくな。Aの元気は元気じゃねぇだろ」
「じゃあ、言い方変える」
「ん」
「腰とか重いけど幸せだからいい」
私の言葉に顔を赤くした勝己くんが
私の肩に顔を埋めてぐりぐりしてきた。
いつもつんつんしてる髪がくすぐったい
ちょっと刺さるんじゃないかっていうのも怖い
「照れないで勝己くん」
「照れてねぇよ」
「顔赤いよ」
「こっちのセリフだわ」
「うそ、私そんな赤い？」
「茹でダコみてぇ」
「悪口」
いつものやり取りに笑ったあと、
ごろごろしながら話した。
「すっごく寂しかったんだよ」
「おう、分かってる」
「でも、あんまり泣かなかったよ」
「人前ではだろ」
「ううん」
「あ？」
「勝己くんの前以外」
お見舞い客が帰って、勝己くんの前で1人になると
いつも泣いてた。
早く帰ってきて欲しくて、
不安で仕方なかったから。
「死なねぇって言ったろ」
「…でもっ、全然目覚まさないから。死ななきゃいいってことかと思って…」
「アホか」
「口が悪い」
「俺がAのこと泣かせたいとでも思ってるのか」
「口の悪さで泣かせてる！！」
止まらない涙の中で叫んだ。
私がどれだけ怖かったか。
「…それは否定できねぇけど」
「ほら〜！！」
「けどその分笑わせてやる」
「…もうバカだよ」
｢お前の方が悪口言ってんだろ！」
ぎゅってベッドの中で抱きついて
大好きな温もりをもっと感じた。
「もういなくならないで」
「たりめーだろ」
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作者名：なつなつき | 作成日時：2019年10月28日 15時
