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「ずっと見てますよね｣
「え、｣
「あの、背の高い方のこと｣
「、そうかな｣
凄く優しい顔してるから特別な方なのかなって。違ったら申し訳ないですけど、と彼女は笑った。見破られるほどに露骨だったりしたんか、それは流石に笑えないが。
「……そんなに？｣
「ふふ、図星ですか｣
「や、恥ずくね？顔出てると思わんかった｣
「露骨にってわけじゃないですよ。ただ少し空気感が甘いというか、勘みたいなものでしたけど｣
別に隠しているわけじゃないけど、むやみやたらに公表することでもないし。何より仕事が仕事っていう理由もある。 まあ俺がわかり易いというよりは、彼女の洞察力か勘なのかよく分からないそれが優秀だったっていう話だった。
「いい人ですか｣
「…まあ、……そうっすねぇ｣
「野暮なこと聞いてしまってごめんなさいね｣
「あはは、気付かれたの初めてだからちょっとびっくりした｣
「……自分も同じだから気付いちゃったんですかね、｣
「んーと、それは、つまり？｣
「わたしもね、あの子だから、着いてきちゃったんですよ｣
良いか好いか、どちらも正解だからと肯定してしまう。聡明な女性の何が怖いって、隠せないとこちらが思ってしまうような圧があるところ。彼女が今後ここに通う可能性はないと踏んだから認めてしまえた、というのもある。
視線が向けられたのは、Aくんがいる卓のひとつ奥。如何にも地雷系といったファッションに身を包む女の子が楽しそうにはしゃいでいた。その姿を見つめる眼差しは優しくて、そして、わずかに甘い。あー俺も傍から見たらこんな顔してるってことか。こんなんバレバレやろ、なんかもうさ、温度が違うわ。
「普段隠してんすか、それ｣
「隠れてるか分からないけど、少なくともあの子は気付いてないと思うんですよね」
可愛いあの子がぞっこんの相手を見てみたくて、と彼女は言う。やっぱつえーよ、俺が同じ立場なら多分来れん。そんなん見たら死にたくなるだろうな。Aくんに好きな人が居るってだけであのザマだぞ。
｢辛くないかって言われるとまあ、ね。そりゃきつい時もあるけど、楽しいからなあ｣
好きな人がいる生活って楽しくないですか、そう投げかけられて考える。
────楽しいよ、夢見心地みたいで。
好きにならなきゃこんな苦しくなかったのに、って思いながらやっぱ好きだなって再確認して。自分の中の概念を根底から覆されるような恋をするのは楽しい。そして俺はそんな恋をしてる、今も。
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作者名：南湖 | 作成日時：2023年3月15日 20時
