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Aくんの隣にいられるなら売上で作られた形だけのナンバーワンなんていらない。君の一番であれたら、それだけで。
そう言い切るとAくんは呆気に取られたような顔をしていた。俺そんな的外れなこと言ったっけ？
「俺最近気付いたんだけど、わりと嫉妬深いらしくて」
「…うん？そうみたいね？、この前もんなこと言ってたし」
「自分のこと淡白な方だってずっと思ってたから、こうなるのは湊さんが初めてなんだけど」
「うん、」
「……確かに、女の子達が湊さんにべたべたしてるの見ると落ち着かないのはある」
何なら付き合ってない時からちょっともやもやしてた節もあった、なんて初知りなんだが。そういうの、もっとちゃんと言ってよ。
「でも、湊さん人の話聴くのそんな嫌いじゃないだろ」
「まあ、そうね」
「肝臓壊すくらいにはお酒飲むし」
「……おっしゃる通りで」
「向き不向きで言ったら多分向いてるよ。……たまに危ういことさえ除けば、ね」
落ちた声のトーンで思い当たったのは、出会ってわりとすぐの頃のことで。
"いつも"に戻れなくなった俺の腕を、Aくんが引いてくれた夜があった。車で送るんで店まで帰りましょなんて言って、迎えに来てくれたんだよな。覚えてるよ、ちゃんと。
「あは……昔はちょっと呑まれそうになる時あったんやけど。ほら、最近は捕まえてくれる人がいるからさ」
「ふらふらされたらたまったもんじゃないからね」
「したら首輪でもつけちゃう？おれ、Aくんからならええけどな全然」
「ばーか、湊さんは犬じゃなくて恋人でしょ」
犬扱いじゃ拗ねるの目に見える、なんて言いながら俺の頭を優しく撫でた。……これは犬扱いじゃなくて恋人扱い？わかんね、どっちもどっちやろ。甘やかしてくれんなら何でもいいよ、俺は。
「ヤキモチ妬いたりはするけど、仕事に関しては特に何とも思ってないってこと？」
「そうだね。あと何かあっても気付ける距離にいるのはデカいと思うんだよな。心的にも物理的にも｣
「……そか、でもたしかに生活リズムもほぼ同じだから、すれ違うみたいなのもないしね」
「誰かにべたべた触られても後で俺が消毒すればまあいっかって」
「うっわ……消毒とかAくんおやじくさくね」
「いえいえ、湊さんに比べたら全然ですよ」
いつも通り軽口叩いて笑うAくんの言葉に嘘はなさそうで。 辞めて欲しいって言われたら、辞める。そう思ったのはほんとだけど。
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作者名：南湖 | 作成日時：2023年3月15日 20時
