４６話 ページ6
この男の行動に少しだけ腹を立てていると、勝己は目の前で｢軽々しく言いやがって…｣だとか、｢今の言葉でハッキリわかった｣だとか、小声で呟いていた。ハッキリわかったって何、どういう意味だ、待って、何その顔怖い。
何よりも今言いたいのは、勝己の顔がただ怖い。めちゃくちゃ眉間にシワが…酔ってる…声も低いし…
私が内心怯えていると、勝己は突然私を引き寄せ、耳元でボソリと一言呟いた。
｢A、お前俺のこと好きだろ。｣
低く、それでいて優しい声で、まるで、勝己じゃないような声で言われたもんだから私は驚いた。
耳に息がかかるほどの距離だった為か肩がビクリと震え、一気にボンッと顔に熱が集まるのを感じた。
何それ。
何、それ。
わけ…わからない…好きかどうかなんて知らない、こっちが聞きたい、そんなこと聞くな、考えきれない、頭が回んないのに、やめてよ、やだ、そんな顔で…
｢こっち見んな！！｣
｢は？｣
｢病人を労れ！！！｣
もはや私はヤケクソで…いっぱいいっぱいで、手元にあった枕を勝己に向かってぶん投げた。
突然の行動だったにも関わらず、勝己は予測できていたかの如く軽々しく枕を避け、枕は何も無い場所へと転がっていく。
なんで避けられんのよこの距離で。いや、勝己に当てようとした私が馬鹿だったんだ。そうだ。
だって見てくださいよ、あの勝己の顔。
額に青筋浮かべてますよ。こわ…
｢せいぜい悩んで熱出してろカス！！｣
｢そうします…迷惑かけてごめんなさい。｣
｢…｣
｢でも…色々と、ありがとう。｣
私がありがとう、と言うと、勝己は数秒間黙って私を見つめたあと、部屋から出ていき扉をバタンと閉めた。
私はベッドの上に力なく蹲り、重い重いため息を吐く。
静かな空間に一人取り残されたせいで、私の頭の中では勝己の言葉が永遠とループしていた。
"お前俺のこの好きだろ"
今まで勝己を恋愛対象として考えてこなかったから、ハッキリとしたことはわからない。出久に色々と質問された時も、勝己のことを恋愛的な意味で好きなのかはわからなかった。
でも、顔は熱くて、心臓はうるさくて、どうにも落ち着かなくて、勝己のあの低い声が鮮明に耳に残ったままだ。離れてほしいのに全然薄れない。
病気なのか疑いたくなるくらい、胸が苦しかった。
｢こんなの…｣
好きとしか、言いようがない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 876人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名取(プロフ) - コナさん» コナさんさえよければ覗きに行ってみてください、私なりの解釈になってしまうとは思うんですが、楽しんでもらえるように上鳴くんのお話更新頑張りますね……！！ (2018年12月1日 0時) (
レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - コナさん» コナさんありがとうございます、そしてとても長い2ヶ月間お待たせして本当にすみません、リクエストくださった上鳴電気くんの小説スタートしました。1日5話更新は難しいのですが今後はコツコツ更新させてもらいます。 (2018年12月1日 0時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
コナ(プロフ) - 名取さん完結おめでとうございます！とても素敵なラストでした。爆豪くんの解釈が一致していたので違和感なく読むことが出来ました。素敵な小説をありがとうございました。 (2018年10月4日 17時) (レス) id: e552838be7 (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - コナさん» コメントありがとうございます、恐縮です…私には勿体無いんじゃないかと思えるような言葉をくれて…ありがとうございます、とても嬉しいです。新作の準備と今作の更新、これからも頑張らせていただきますね…！ (2018年7月7日 10時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - 小豆さん» コメントありがとうございます、爆豪くんの作品は書いてて不安な点も幾つかあったので、そう言っていただけて安心しました。応援してくれてありがとうございます、励みになります。これからも更新頑張らせていただきますね…！ (2018年7月7日 10時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名取 | 作成日時：2018年6月25日 12時
