第5話 ページ6
｢先生。｣
｢わっ、轟くん…？どうかした？｣
｢プリント落ちましたよ。｣
｢えっ！？…ごめんね、全く気づかなかった、ありがとう。｣
｢いえ…｣
｢優しいね、轟くん。｣
｢…｣
俺が手渡すプリントを受け取りながら、先生はにこやかに、"轟くんが優しくて助かった"と言った。何故そんなに優しい表情でわざわざ言ってきたのか、プリントを拾っただけでまるで救われた、とでも言うかのようにお礼を言ってきたのか、俺には見当もつかない。
先生はきっと、勘違いをしている。
｢俺は別に優しくねぇ。｣
｢…優しくない人は、わざわざこうやって拾って届けたりしてくれない。｣
｢ただの気まぐれだったら？｣
｢でも今こうやって、助けてくれたことには変わりはないでしょう？｣
何故こんなに子供じみた屁理屈を言って抵抗したくなったのかなんて、わからない。俺が言った屁理屈にも、先生は笑いながら返事をした。
｢轟くんも案外子供らしい所あるんだ｣
｢…まだ高校生だからな｣
｢確かに！｣
でも轟くん、普段大人っぽいからそういう姿見れたのがちょっと嬉しくて。
先生は、またも笑ってそう答える。大人っぽい、か。その割には俺は自分の感情に対して疑問を抱えてばかりだ。分からないことが多くて、どれから手をつけ解消したらいいのかもわからない。
先生は、俺が子供らしくて嬉しいと言ったけど、何故嬉しいのか、何故そう思ったのかも俺にはわからない。
｢あっ、引き止めてごめんなさい、轟くんも早くクラスに戻った方がいいね…。轟くん、｣
｢…？｣
｢ありがとう｣
再度、先生が俺にお礼を言う。その後、
"ありがとうって言われたらなんて答えるべきかわかる？"
俺より少し身長の引い先生が、まるで小さい子供に言うかのようにそう俺に問いかけてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名取(プロフ) - 漱さん» コメントありがとうございます、作品のことを好きだと言ってもらえてとても嬉しいです。今後も楽しんで貰えるようにコツコツ更新頑張ります！ (2018年6月7日 13時) (
レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - あーーーーすごく好きです！！！！更新頑張ってください！！ (2018年6月6日 23時) (レス) id: a1b019c15f (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - ミクさん» コメントとっても励みになります、本当にありがとうございます。楽しんでもらえるように、これからも更新頑張りますね…！ (2018年6月4日 2時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 続きがとても気になります！更新頑張って下さい！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 38ae65cfeb (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - 凜花さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます、コメントとても励みになります、これからも更新コツコツ頑張ります…！ (2018年6月2日 1時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名取 | 作成日時：2018年6月1日 20時
