第43話 ページ44
実に緑谷達らしい会話だなって思った。姉弟仲がいいんだろう、二人ともそっくりの笑顔を浮かべながらにこやかに話してた。そんな二人をぼーっと眺めてたのは、恐らく無意識だ。
｢じゃあね、帰り道気をつけて。飯田くん、麗日さん、轟くんも。｣
｢はい！｣
｢…はい。｣
｢はーい。｣
声をかけられ、三人揃って返事をする。
…危ない、うっかり前みたいにタメ口で話す所だった。先生には…バレて無さそうだな。先生の変わらぬ様子に、ホッと息を吐く。
今日教室前の廊下で顔を合わせた時、先生はビックリしたからか俺を凝視してて、それに不意に笑っちまったけど、これじゃ人のこと言えねぇな…俺も気をつけとかねぇと。
緑谷が俺達の方まで戻って来て、先生は俺達の隣を通り過ぎて職員室に帰っていく。
距離が縮まり、そしてまた離れていく際に俺は一つのことに気がついた。
俺は、俺自身のことを疑いたくなった。
思考が一時停止してしまい、その場に立ち止まる。
｢…｣
｢…轟くん、どうかしたの？｣
緑谷は俺の様子がおかしいことに気づいたのか、小声で話しかけてきた。
でも、その言葉に返事をすることも出来ないほど、俺は少し混乱していた。
待ってくれ、どういうことだ。
……先生から、あの香水の匂いがした。
今日嫌という程嗅いだ匂いだ、今もその匂いは鼻に残っていて取れていなかったんだ。だからすぐに気づいた。隣を通り過ぎる際、流れてきたあの香りに。
｢緑谷、一個、聞いてもいいか。｣
｢うん？どうかした？｣
｢…先生は、香水つけたりすんのか。｣
｢お姉ちゃん？お姉ちゃんはつけたりしないよ、僕と一緒であんまりそういうの興味ないみたいだし…｣
…なら、どうして。
もしかしたらA先生は流行に敏感な人で、最近あの香水が人気なことを知って今日つけていたのかもしれない、と思った。でも、緑谷はそうじゃないと言う。身近な、しかも実の弟が違うと言っているのだから本当に香水に興味がある訳では無いんだろう。
ただの香水だったら、こんなに考えたりしなかった。
でも、葉隠は言っていた、あれはただの香水じゃなくて、｢男物｣なんだと。
心の中で、感じたこともない何かがざわつき始めるのを感じた。
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名取(プロフ) - 漱さん» コメントありがとうございます、作品のことを好きだと言ってもらえてとても嬉しいです。今後も楽しんで貰えるようにコツコツ更新頑張ります！ (2018年6月7日 13時) (
レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
漱(プロフ) - あーーーーすごく好きです！！！！更新頑張ってください！！ (2018年6月6日 23時) (レス) id: a1b019c15f (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - ミクさん» コメントとっても励みになります、本当にありがとうございます。楽しんでもらえるように、これからも更新頑張りますね…！ (2018年6月4日 2時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 続きがとても気になります！更新頑張って下さい！ (2018年6月3日 7時) (レス) id: 38ae65cfeb (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - 凜花さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます、コメントとても励みになります、これからも更新コツコツ頑張ります…！ (2018年6月2日 1時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名取 | 作成日時：2018年6月1日 20時
