馬鹿にしてるのか！芸術を！ ページ14
「はい、これでどう？」
夜明けも近に迫る頃、ナイチンゲールさんと戯れていた所にワルデンさんが差し出した一枚のキャンバス
貰った時よりも、花はもっと濃い色付がなされており、水彩画の夜空はベタ塗りで消された代わりに、ついにはワルデンさんは夜空を生み出す神になったのか、と、本物の空かと思う代物があった。
「流石です、薔薇に追加された華々しい色達がまるでワルツでも踊っているかのようです。私の水彩画も、まさか上から絵の具を塗ってしまって、新しく書いてしまうとは、貴方様の発想には驚かされます。」
「はあ⋯当たり前だし煩いから別に褒めなくてもいいよ。」
「あ、ごめんなさ⋯吹っ切れるといつもこうで、」
土下座して謝罪してみせると、ワルデンさんはまたはあと大きな溜息をひとつ吐く。
「はい、早く受け取りなよ。」
「⋯え？ワルデンさんが受け取るんではなくて？廃棄すると決めたともだとしても、こうして完成させたじゃないですか。」
「でも君に譲ったから、因みにお金も要らないからね。ゴタゴタ言わず早く受け取ってくれない？」
ぷらぷらとキャンバスが微動する。早く受け取るように促しているのだろう。
受け取ると、「はい、じゃあ僕は帰るよ。おやすみ。」と言い残して、去ろうとする背中を見た。
「あっ、ちょっと待って下さい。折角ですし、何かお礼でも、画家さんなのに、お金も無しに働かせてしまったし、私も、それ程じゃないけど絵が描けるので、見て下さい！」
私はまた袋の中身を探り、紙を探り当てる。鉛筆も発見して、地面に紙を押さえ付け、砂利で紙がデコボコになっていながらも、一枚の絵を描きあげた。
「⋯分かったけど、君に僕の時間を使ってあげるんだ、感謝し⋯」
「ほら！神奈座 ゆみちゃんです！！」
流石は漫画を書く人間、書くスピードが早い。
絵の内容はこうだ、ハッチャメチャカのヒロイン、うさ耳のクールビューティ、神奈座ゆみが大きくキラキラとした目で決めポーズを取っていると言う物、
「ほら！萌え絵です！」
だがしかし、読者の皆様にお伝えしよう。
エドガー・ワルデンは萌え絵が地雷である
復唱しよう。萌え絵が地雷である。
故に、エドガーは切れた。
「バカにしてるのか！芸術を！」
夜明けを迎えた荘園、彼の叫びによって、一部を除きサバイバーとハンター達は飛び起きたのだった。
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作者名：楢葉 しのぶ | 作成日時：2022年9月7日 3時
