月光の彼 ページ12
「⋯よし、」
隣のベッドで眠るワルデンさんを確認して、私は忍び足で部屋を出た。
゛え？夜中に部屋を抜け出したい？庭師さんの管理するあの花畑で絵が書きたい⋯画材を貸してほしい⋯
随分と要求が多いですね。画材とは、絵が描きたいのですか？゛
゛はい、そんな所です。゛
゛そうですか⋯この子と一緒ならいいですよ、゛
と、そんな経緯でナイチンゲールさんのナイチンゲールさん(梟)に付き添ってもらい、花畑へ向かう。
腰を丸くして、誰も起こしてしまわないように差し足で歩む。呼吸の音すら殺し。
夜に外に出るなんて、久しぶりだ。引きこもっているから。薬の効果ですぐ寝てしまうから
そうして、抜け出して、やっと着いた花畑。
ありがとうとナイチンゲールさんにお礼を一言言うと、応えるように「ポッポォ」と鳴く、
肩に掛けた袋を下ろす。その中から筆を探り出し、次にパレッドを見つける。バケツと、瓶の中に収まった水。
次は赤と黄色、緑と紫、それに青と白に緑。これで全部かなと整列する絵の具達を一瞥して、画架に丁寧キャンバスを掛けると、筆を持った。
「始めよう。」
ちょんと筆先を水に付ける。
目的はあくまでワルデンさんが描いた花の周りを映えさせること、背景が煩いとダメだ。
それで考えた方法はコレ、水彩画だ。これなら花の方が存在感が強くなるだろうし、背景は弱めで行ける。
蒼で塗りたくる。何処から持ってきたのやら、横がカッターのようになっている扇子を、震えながら持ち、仰ぐ、
乾いたのを確認すると、その上に紫、青紫、白、と塗り重ねていく、
なるべく、ワルデンさんの花に手を付けてしまわないよう、明るさを工夫しながら、
「草⋯渋い色だよな。どうやって作るんだろう⋯黒かな。」
「違う！馬鹿なの？この色は黄色と紺色でしょ、」
叱る声が聞こえて、振り向くと、寝巻き姿のワルデンさんが、不機嫌そうにそこに居た、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：楢葉 しのぶ | 作成日時：2022年9月7日 3時
