4 ページ4
「………あ、もうこんな時間じゃん。俺体育倉庫行く用事あんだよね〜、Aも暗くなる前に帰れよ」
『は、はあ！？おい、質問に答えろよ猿山ッ！』
「ばいび〜」
咄嗟に伸ばした先の手で、教室のドアが閉まった。
『…………』
呆然と立ちすくむ。
はぐらかされた。今初めて、あからさまに。
ふいに胸が苦しくなる。
私はこれまで、わざと冗談めかしたように「好き」とか言っていた。本気で恋なんてしてないよ、これは揶揄ってるだけだよ、なんて言うように、あくまで表面だけ。
それが、殻を破って一歩踏み込んだ結果これだ。
猿山先生は、私のことまじめに取り合う気がないんだ。
最初っから先生と生徒だから。
拒絶と言ってもいいようにされて有耶無耶になった気持ちが、胸の奥で転がり腐っていく。
せんせーと、ちゅーしたい。
抱き締められたい。一緒に住みたい。嫉妬されたい。好きって言ってほしい。なでてほしい。一緒に寝たい。他の誰より大切にしてほしい。
私だけに笑っていてほしい。
『……こんなのって、ひどいよ………』
教卓に腕と顔を伏せた。
震える肩。勝手にこぼれる涙がカーディガンの袖とツルツルした木目に落ちる。
だめだ、涙が止まらない。
この後もし猿山に会ったら、赤く腫れた目をどう説明すればいい？
こんな時でさえ、先生に「どうした〜？」とか心配される事を想像して騒ぐ心臓が煩わしかった。
なんと答えようか迷っていたとき、不意に時計を見て、体育倉庫へ向かう用事を思い出した。それをいい口実にして 、彼女の前から姿を消す
彼女にとってはただのからかいでも、俺にとっては首がかかっているのだ。不用意に答えて噂が広まりでもしたら、そしてそれが校長の耳に入りでもしたら。もう一生彼女には会えないし、人生そのものが詰む可能性だってあるのだ。
ごめん、とか。言う必要もないかと1人廊下で寂しく笑った。彼女はまだ若い。俺みたいなおじさん眼中にもないだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
774号（現在稼働中）(プロフ) - 〜さん» わ、ありがとうございます〜！今後色々加筆修正するかもです！ (3月30日 6時) (
レス) id: d970fcc3ac (このIDを非表示/違反報告)
〜 - 完結おめでとうございます！！こんな神作を執筆中に見れたという事を誇りに思います！！ (3月29日 21時) (レス) @page8 id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
774号（現在稼働中）(プロフ) - 〜さん» ありがとうございます！続きをもう少々お待ち下さい！ (3月26日 17時) (レス) id: d970fcc3ac (このIDを非表示/違反報告)
〜 - 好きです！！！もう最高です！！！！ (3月26日 13時) (レス) id: de8cd53295 (このIDを非表示/違反報告)
774号（現在稼働中）(プロフ) - しぃさん» ご注意本当にありがとうございます、なぜか外れません、、、現在運営様に報告しております。 (3月25日 22時) (レス) id: a4d1e34ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：774号（現在稼働中） | 作者ホームページ：続きます
作成日時：2024年3月25日 19時
