「ねぇ、先生。」 (ページ2)

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私は担任である猿山らだ男が好きだった。

いっつも同じような青ジャージを着てるところも、他生徒からイジられてるところも、Aがどんなにアタックしても笑って躱されるところも、全部全部。

『……猿山』

「なに？」

『……私のこと、好き？』

「黙って課題してれば好き」

『は、なにそれ～！？』

ほら、こうやって。

こうなると、これ以上何をいっても「課題しろ」しか言わないので大人しくノートと問題集に向き合う。昨日コイツらを開かずに寝たのは先生とのこの時間のためだった。居残りすれば、この時間だけは“皆のせんせー”を独り占めできるから。

時計の針がかちりと鳴る。時刻は5時を回り、シンデレラは繋いでいた王子の手を離して踊りを止めなければいけない。

もとから、一緒に踊ってなんてくれないけどね。

今度は苗字呼び捨てだ。同級生かよ。いやそれもいいな。
とかなんとか、また馬鹿なことを考えながらボールペンをノックさせていたら、彼女から衝撃的な質問が急に飛んできた。

『……私のこと、好き?』

「黙って課題してれば好き」

思わずノータイムで答える。危ねぇってば。そんな顔で聞かれたら絶対好きって言うって。なんだその誘導尋問。俺を社会的死に誘導するな。

次なんか言われたら課題を盾にして逃げよう。そう心に決める。これ以上この手の話題が続くと絶対にボロを出す自信があった。