・ ページ40
「せやね、俺は狂っとるのかもしれへん。
でも…Aさん、俺をそうさせたのはアンタやで？」
『私が？馬鹿なこと言うんじゃ…』
「あはは、俺やって最初っからこんなこと考えとったわけや無いですよ？最初はただの崇拝やったんです。
……いや、それは今もか」
ツ、と冷たい刃の当てられた首から血が伝った。その赤に、心底嬉しそうに笑うチーノ。
「例えば、割れたステンドグラス。あれ、普通の状態より幾分綺麗やったやないですか。キラキラしとって……
壊した方が綺麗やと思います、美しいモノって。壊すっていう行為自体綺麗やないですか。
あれから俺、考えるようになったんです。
美しいと感じたものの、その美しさが現状で最高なワケあらへんな、って。」
『何をっ……』
「あの美しさ、神聖さ……アレよりもっと綺麗なモンを、破壊を通し、俺がこの手で作り出せるんやったら、それは俺の人生そのものや！
……ってね。」
ひゅ、とAの喉から空気が漏れた。震えで歯がガチガチ言う。
そんなAを………いや、何か他のものを見ているような眼差しで、チーノは独り言のように続ける。
「現に今、壊される貴方は数分前より格段に美しい。
……貴方は此の儘、俺の至高の神様のままでずっと生きるんです。俺の元で、俺の手の中で。」
やっと俺のモノだ。
そう本気で思うチーノは、自分が狂ったことを言っている自覚はあった。これじゃ三流のサイコパスだ。
早くこの手を離さないと。好きな人が怯えきった顔して可哀想。謝らんと。
(……それでも、それでも俺の手の中の貴方は美しいし、愛おしいんやけどな。)
ーーーーーーー
かしゃりとAの手首にかけられた手錠と鎖が鳴いた。
部屋のど真ん中で、へたりこんで只々嗚咽を漏らすA。
その隣に、寄り添うようにチーノが座っていた。時折慰めるように頭を撫でたり、何か囁いたりしている。
これが俺の望んだ、欲しかった彼女か。
そう自問自答しては、チーノは弱り切ったAを見つめていた。
「……きっと、俺たちの間にはステンドグラスでもあったんよな。神である貴方と、それを崇拝する俺。突き破ってしもたもんは、返ってこぉへんよなぁ。
……壊してしもたんやなぁ、貴方を。」
ぽろり、橙の目から涙が溢れてAの冷たい頰に落ちる。
泣いている、然しチーノは満足していた。
「美しくて、可哀想な俺の神様。
ずうっとここに居よう？A。」
(fin)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
774号（現在稼働中）(プロフ) - 葵さん» 閲覧、コメントありがとうございます！リクエスト承知致しました。只今こちらの作品の続編のページで書いているお話が終わりましたら直ちに取り掛かります！ (2023年3月20日 22時) (
レス) id: a4d1e34ed0 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - コメント失礼します。リクエストでemさんの彼シャツお願いします。 (2023年3月20日 17時) (レス) @page4 id: a54831e378 (このIDを非表示/違反報告)
774号（現在稼働中）(プロフ) - 閻魔さん» お、お前……(歓喜)読んでほしいところ全部言ってくれてるよそれ……！！ありがとう！！！そーなのよ！！ (2022年11月13日 12時) (レス) id: a4d1e34ed0 (このIDを非表示/違反報告)
閻魔(プロフ) - 洗脳されてる時のほんわかカップルと、それが切れたときの支配被支配の関係は紛れもない「明暗」だし、催眠術で惚れさせるって言うのはhtにとって「名案」だったんだろうな....てか勝手に妄想してごめん (2022年11月12日 16時) (レス) @page49 id: 6790531008 (このIDを非表示/違反報告)
閻魔(プロフ) - まって...タイトル回収胸熱すぎるし、htのこと絶対好きじゃん夢主...!!htは夢主のこと夢から醒めさせないし、自分も夢から醒めないんだな (2022年11月12日 16時) (レス) id: 6790531008 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：774号（現在稼働中） | 作者ホームページ：No.
作成日時：2022年8月4日 19時
