《BTS》新人発掘課の私、無名練習生を持つ。 (ページ42)

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『なんの為にこの仕事があるのか少し分かった気がします』

「お、なんだ、お前もやっと成長した？」

…あの後の彼の表情。辛そうだった。
まだ幼い青年を突き放して育成する必要があるのかと自分自身を一瞬疑った。

だけどその疑いを一瞬で終わらせる事が出来たのは他でもないその彼の存在。

ありがとうございます。と深く頭を下げて、悔しい表情を時折見せながらも大人しく家に帰った彼は、

今日晴れやかな表情で事務所に来た。

私のあの言葉だけが彼を変えたのだとは全く思っちゃいない。
それでも、あの時私がかけた言葉は少しでも彼に響いたのだと思うと、凄く安心するし、心做しか嬉しい。

「勇気いるよな。帰らせるの」

何を察したのか、はたまた聞いたのか、聞き返す気にはなれなかったけれど、
先輩の真面目な表情を見て、素直に頷いた。

「偉い。2人とも」

『…なんだか気が狂いますね、そんな事言われたら』

「大人しくありがとうございますって言っときゃいいんだよ全く！前言撤回、成長しちゃいねぇな」

子供か。と突っ込みたくなる程に一瞬で拗ねる先輩を一瞥した後、デスクに戻ってSNSを回る。

『うーん…』

現代はSNSの普及に伴い、光るものを持つ素人に目を付けやすい。
SNS上でのスカウトで事務所に入った子は現練習生のうちの20%。

裏を返せば実力のある子は比較的多いということになる。

自分の実力をいつどこででも発信出来るという手軽さに関してはメリットであるが、
その大勢の中で抜きん出た魅力を持たなければならないという条件に関してはデメリット。

発掘課の社員の目が段々肥えてきている今の状況では、並大抵の人材ではまったくもって通用しない。

現にこの子。

ビジュアルはそこそこといったところで、ボーカル、ダンスに関しても何ら遜色ない。

それでもこの子を引っ張りたいと思わない理由は、個性が突出していないからなのだと私は思う。

遜色があろうが、どんなに下手であろうが、それでも個性は何かしらの形で光って見えるもの。

新人の私でも、目は肥えている方だと思っている。

この先育てていく上でどれ程成長出来る容量を備えているか、それを見極めるのが最も、私達の仕事だ。

「あー。もう。個性がずば抜けてねーんだ、こう、いまいちっつーか、

やっぱあのマンスリーの子がいいな…俺」

『先輩、それ独り言ですか？』

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